「皆さん、今日は来てくれて本当にありがとうございます!」
大きなステージで、沢山の観客に囲まれてコンサートをする名前。音楽番組で見た顔とも、映画の撮影で見た顔とも、プライベートで見る顔とも違う。生でお客さんを相手にすると、こんなに活き活きして、可愛い顔をするんだって初めて知った。そして、そんな顔をずっと知ってたファンの人達に勝手に嫉妬した。
「今日で、私は日向坂46を卒業します。……けやき坂46時代から5年間、長いようであっという間でした」
少しずつ言葉を詰まらせて、でも決して笑顔を絶やさない彼女。「泣かない、泣かない泣かない……!」って小さな声で何度も呟いてて、心の中で何度も"頑張れ"と呟いた。ファンの人達の「頑張れ!」という声も会場に響いた。
「日向坂の皆が大好きで、このメンバーといれて本当に、幸せでした。楽しいことばかりじゃなかったけど、でも辛いことも全部、分かち合える仲間がいて、ずっと皆に支えられてきました。それに、優しくて温かい、ファンの皆さんの、おかげで、ここまで、来ることができました。ファンの皆さんがいたから、笑顔になれたし、頑張ろうって思えました。大好きです」
真っ直ぐに前を見つめていた彼女が、メンバーや、この会場を埋める大勢のファンの人達に声を掛けるように話していく。
「それと、今日会場に来てるお父さん、お母さん、お兄ちゃん。私の夢を、笑わずに応援してくれてありがとう」
隣で見ていた阿部ちゃんが少しだけ口元を覆った。会場が歓声に包まれる中、センターで幸せそうに笑う彼女の姿が目に焼き付いて離れなかった。
「この曲で最後です。聴いてください。『アザトカワイイ』」