気付いたら床で横たわってた。……飲みすぎやな。寝とったわ。どのくらい寝たかも分からなくてスマホを探そうとしたけど、ふっかさんが名前さんを呼ぶ声が聞こえて動きを止めた。
深澤「まだ引きずってんの?」
「……誰のこと」
深澤「んなの、言わなくても名前が一番よく分かるでしょ。それとも、単純に康二がタイプじゃなかった?」
「……まぁ、タイプではないけど、悪い人だとも思ってないよ」
深澤「じゃあOKしても良かったんじゃない?」
「……できなかった」
深澤「やっぱ引きずってんじゃん」
「……ちが、う」
だてさんが「大丈夫、大丈夫」と名前さんを宥める声が聞こえた。涙声で「違うもん……」と呟く彼女を慰めとるんやろうな、きっと。
深澤「連絡とかは? してんの?」
「……時々」
誰のことなんやろ。元彼とか……? 俺の知らん人かな。知っとる人やったら、比べてまうから、知らん人がええな……。
深澤「てかなぁんで別れたの」
「……重たかったから」
深澤「もっさんが重いのなんか今に始まったことじゃないじゃん」
もっさんってあれ? 照にぃのこと? 照にぃのことやんな……? え、照にぃの元カノなん!? ふっかさんが言った"もっさん"が俺の知らないもっさんであることを切に願った。
「……はたから見てる分にはさ、重たいのもいいなって思ってたの。自分のこと1番に考えてくれるのって、嬉しいし幸せなんだろうなって。若かったしね、あの頃」
深澤「今も充分若いっての」
「辛くなっちゃったの。私が。……事細かにスケジュール言うのとか、友達とご飯行くだけなのに男いんの? とか、何時に帰ってくる? とか。……ナンパされただけなのに、この匂い何? 今日男といた? って詰め寄られたのはさすがに堪えたっけ。何もしてないのにずっと疑われてる感じがして」
ぽつりぽつりとこぼされる言葉に頭を悩ませた。俺の方が苦しくなってくる。
「それでちょっとずつ、連絡する回数、減らしてった。返信も、少しずつ遅くして……。でも、そしたら今度は照くんがしんどくなっちゃったんだろうね。私が悪いんだけど、喧嘩することも増えて、それで……、もうぶつかるのも嫌になって、別れたいって言っちゃった」
深澤「へぇ……」
「……好き、だったんだけどなぁ」
ぽつりと零された彼女の言葉にはまだ、未練が残っとるように聞こえた。
深澤「より戻すとかは?」
「んー……ないね。しんどくなんの分かってるから。……今がちょうどいいんだよ、たぶん」
深澤「そっか」
「無責任な話だけどさ、照くんには幸せになってもらいたいんだ。私なんかじゃなくて、もっと可愛くて、照くんのことを大切にしてくれる人と」
言い聞かせてるみたいな口ぶりに胸が苦しくなった。
深澤「……お前が、名前が照を大切にしなかったとは、俺は思わないよ」
宮舘「名前なりの大切の仕方と、照なりの大切の仕方が違ってたんだね」
少しだけ鼻をすする音が聞こえた。たぶん、名前さんの。
宮舘「名前、コンビニ行かない?」
「え? いつもは、危ないからダメって……」
宮舘「今日は特別。アイス買ってあげる」
「……ん、分かった」
深澤「撮られんなよ。俺ハーゲンダッツで!」
宮舘「わら」
「わら」
深澤「なんだよその返し!」
2人が出ていくと、辺りは急に静まり返った。少ししてふっかさんが「起きてんだろ」と俺に声をかけてきた。
向井「……気付いとったん?」
深澤「いや、なんとなく」
向井「俺どうしたらええんやろ。……だって、照にぃの元カノ、なんやろ」
深澤「ん。まあそうだね。……そのこと知ってんの俺と舘さんくらいだけど」
向井「……好きやん」
深澤「お前が?」
向井「違う。いや違わんけど……、名前さん、照にぃのこと、まだ好きやん……」
深澤「さあ。そこは知らねえよ」
あんだけ聞いとったら分かるやろ。もう……! あぐらをかくふっかさんの膝に頭をぐりぐりと押し付けてふて寝する。
向井「俺諦めんよ……」
深澤「おう。好きにしろ」
向井「ん、頑張る」