全部全部、見せてよ

今日は、俺の方が先に店についていた。そわそわと落ち着きがないままに彼女を待つ。数十分のうちに彼女が「お疲れ様」と入ってきた。

向井「ん、お疲れ様」
「今日は康二くんの方が早かったね」
向井「めっちゃ巻いた!」
「あはは、凄いじゃん」

しばらく他愛もない話をして食事を進める。この時間、永遠に続けばええんやけど、と思って、でもやめた。前に進みたいもん。

向井「……今日で、最後やんか」
「うん。そうだね」
向井「3ヶ月間、どうやった?」
「それって何言えばいいの? 総評?」
向井「うーん……、たしかに、それもそうやな……」

悩む俺を見てくすくすと笑う名前ちゃん。

向井「なぁ、最後に1個だけ聞いてもええ……?」
「ん、何?」
向井「照にぃのこと、今でも好き……?」
「え? あー……、好きだよ」

自分で聞いといて辛なってきた。なんでこんなこと聞いたんやろ。でも聞かずにはおれんかった。

「あ、人としてって意味ね。……分かる?」
向井「え、あ、おおん」
「分かってないね」
向井「……分かっとる、よ」
「じゃあ私からも1つ、質問ね。……康二くんは、今でも、私のことが好き?」

どきりとした。真っ直ぐに見つめられて、顔に熱が上がっていく。首を何回か振って頷く。

向井「好き、むっちゃ好き」
「……良かった」

彼女はくたりと笑った。良かったって、どういう意味? まだ俺のこと、弄ぼうとしとるん? ……それでも、ええけど。

「私も好きだよ」
向井「え?」
「康二くんのこと、好きになったよ」
向井「それって、え、それも、人として?」
「……人としてもだけど」

彼女の唇がゆっくりと動く。「恋愛対象として、ちゃんと好きだよ」って。スローモーションに見えて、うるさいくらいドキドキした。

向井「でも、今でも、照にぃのこと、好きやって」
「だから言ったじゃん。人としてだって。やっぱり分かってなかったね」

そう言って彼女は笑った。俺は、目頭にじんわり涙が浮かんでいて、胸がいっぱいになった。

向井「……ええの? ほんまに俺でええの?」
「康二くんがいいんだよ」
向井「ほんまに?」
「ほんとに」

彼女の言葉が嬉しくて、幸せすぎて涙が出た。ぼろぼろと泣き出す俺を見て彼女は「泣き虫さんだ」と笑って、くしゃりとその顔を歪ませていた。


家に帰り、彼女を俺の膝の上に乗せる。見つめ合って「ちゅーしたい」って言ったら名前ちゃんは静かに目を瞑ってくれた。これって、OKってことやんな?
触れるだけのキスをして、でもまだ全然足りんくてまたキスをした。

向井「……なぁ、俺のどこが好き?」
「顔」
向井「お、おおん」
「ふふ、冗談。顔は普通」
向井「普通なんかい!」
「……出会い方は悪かったけど、ずっと優しいところ。甘えたがりやさんで、すぐハグしたくなるところ。なになにしていい? って、聞いてくれるところ。年上だけど、可愛いところ。……こんな私を、好きって言ってくれるところ」

たまらんくなって彼女の唇を奪う。もう、軽いキスなんて生易しいもんじゃなくて、めっちゃ濃厚なやつ。

向井「好き。むっちゃ好きやねん。俺、名前ちゃんのことしか、考えられんくらい、好き」

ぎゅうっと名前ちゃんを抱きしめる。名前ちゃんは照れ笑いを浮かべながら「私も好き」って可愛いこと言ってくれた。