彼女はいつも突発的に電話をかけてくる。理由はいつも同じだから聞かなくても分かる。正直、無視することも出来るけど、そうしたらまた彼女が悲しむと思ってついつい毎回電話をとってしまう。
阿部「はい、もしもし」
「あべちゃぁん……!」
阿部「何? また振られた?」
「……うん」
阿部「懲りないね、ほんと」
「……だって、好きなんだもん」
鼻をすすりながら呟かれた言葉に胸がちくりと痛んだ。
「いつもね、"ごめんなさい"って言われるの。なんで、って聞いたら、名前にはもっと良い人がいるよって。……涼太くんは、なんで私じゃないのに私のことが分かるのかな。……どうして、私じゃ、ダメなのかな」
彼女の声が震えて、嗚咽が混じる。長く伸ばした髪の毛も、すらりと伸びた足を隠すように履いてるロングスカートも、全部だてさんの好みで。……昔は髪の毛短かったけど、ここ数年はずっとだてさんの理想から離れた格好をしているところを見たことがない。
泣きじゃくる彼女を慰めることも出来ず、ただひたすらに聞き役に徹する。「俺じゃだめなの?」っていつも喉まで出てくるけど、言えた試しはない。……だって、言えないよ、こんなに一途に誰かのこと想ってる子に、そんなこと。
「……ごめん。いつもこんなのばっかり聞いてもらって。ありがとう、おやすみ」
阿部「あ、おやすみ……切れた……」
まだ全然鼻声なの分かってるからな。それなのに、彼女はいつも途中で話を切り上げて電話を切る。
昔、ふっかから聞いた話だと、夜中まで泣きっぱなしなんてこともざらにあるとか。……そんな泣くくらいなら、だてさんが言うみたいに、他にもっといい男探した方がいいんじゃないかって思うけど、それが出来てたら俺たちはこんなジレンマに阻まれて生活しないで済んでるはずだ。