深澤「あんま名前の電話、付き合わなくてもいいよ? 阿部ちゃんだって勉強あんだし」
阿部「いや大丈夫。……ほら、ふっかには話せないけど、俺には話せることだって、あんのかもしれないじゃん」
深澤「どうせずっと恋バナだろ?」
かれこれ7年間、彼女の玉砕報告を聞き続けてる俺からしたら、この生活は半分日常みたいなもので、今更誰かに代わってもらう気はない。でも、名前がどうしたいのかはよく分からないままで、雲を掴もうとするくらい困難で、過剰な心配ばかりが胸を襲う。
阿部「名前と付き合うの、難しい……?」
いつだったか、だてさんにそんな不躾な質問をしたことがあった。恋とか愛とかは結局のところ当人同士の問題だから、俺が首を突っ込むいわれもないんだけど、ただどうしても名前のことになると、そこまで考えきれてないことが時々あった。
宮舘「……難しいね。彼女には、俺なんかより良い人がいると思うから」
阿部「だてさんのいう、だてさんより良い人って、どんな人のこと?」
宮舘「阿部」
阿部「俺?」
宮舘「名前が俺に振られる度に、話聞いてあげてんでしょ?」
阿部「まぁ、そうだけど……」
宮舘「そうやって気にかけてくれる人がいるのに、憧れなんかでいつまでも俺なんかを好きじゃだめなんだよ、名前は」
憧れ。だてさんはそう呟いた。名前はよくそれを初恋と呼ぶ。お姫様扱いが忘れられないってそんな話。そんな彼女を小さい頃から知ってる俺は、どうしたらいい? ただの相談相手止まりの俺。今更王子様にもなれなくて、かと言って略奪者にもなれそうにない。もだもだとこの奇妙な関係に足を取られて、身動きすら取れなくなっていた。