(神頼みも底を尽きた)

「涼太くん」
宮舘「名前」
「お待たせ」
宮舘「ううん。急に呼んでごめん」
「……何かあった?」
宮舘「彼女が出来た」
「えっ……」
宮舘「だからもう名前の気持ちに応えることは出来ない」
「……今までだって、1回も応えてくれたこと、ないじゃん」

くしゃりと笑う。その笑顔が引き攣ってるのなんて、誰が見ても分かるものだろう。でも、彼の前では笑ってたい。そのくらいのわがまま、聞いてくれてもいいよね。見て見ぬふりしてよ。お願いだから。

「ねぇ、1個、聞いてもいい?」
宮舘「うん。何?」
「どんな子……?」
宮舘「え?」
「……彼女、どんな子?」
宮舘「……強がりで、泣き虫で、おかしなくらい真っ直ぐな子だよ」

涼太くんの顔は今までで一度も見たことないくらい優しい顔をしていて、顔も知らないその子に嫉妬した。……でも、同時に敵わないとも思ってしまった。

「……彼女のこと、幸せに出来そう?」
宮舘「勿論。幸せにするよ」
「そっか」

泣かない。泣かないの。女の涙で、彼の気を引くなんてこと、出来ないし、したくない。

「……じゃあ、これで、最後にするから」
宮舘「うん」
「……涼太くん。ずっと、涼太くんのことが、好きでした。18歳の時からずっと、ずっと大好きでした」

毎日、涼太くんのこと考えてたよ。涼太くん好みの女の子になりたくて、メイクの技術もセンスも磨いて、料理だって苦手だったけどそれなりに出来るようになったよ。阿部ちゃんは美味しいって言ってくれたよ……。

「諦め悪い私に、ずっと付き合ってくれて、ありがとね……」

泣きそう。こんな顔見せたくない。くるりと踵を返して、最後は涼太くんの顔見れないまま「帰るね」と呟いた。

宮舘「……名前」

こんな時ばっかり、呼び止めないでよ。後ろ髪を引かれる思いってこういうこというんだね。初めて知った。

宮舘「俺のこと、好きになってくれてありがとう」

あぁ、ずるいな。そんなこと言われたら、嫌いにもなれない。早く忘れてしまえたらって思ったのに。
何も言えないまま、走って逃げた。あれ以上話すと、泣いてるのがバレると思ったから。頬を伝う生ぬるい涙を拭うことも出来ずにただ闇雲に走る。何回も躓いて転びかけて、それでも……それでも……。
子供みたいに泣きじゃくって、どうにもならない気持ちを押し付けるために、彼に電話を掛けた。