「男装名くん」
「ん? 何、康二」
外での撮影中、ふと彼の名前を呼んでみた。聞こえるか聞こえんかのギリギリやったのに、男装名くんはそんな俺の声もちゃんと拾ってくれる。
きょとんとした顔が可愛くて思わず写真を撮ってしまった。あ、今のめっちゃいい感じに撮れた。可愛い。
「今日も調子いいね、フォトボーイ」
「おうよぉ! 被写体もええしな」
「ふふ、ありがとう」
刹那、花嵐が俺らを包む。風に舞った桜が男装名くんを囲んで、桜の妖精みたいに見えて……。あかんな、めっちゃ可愛く見えてまう。
「びっくりした……」
満開の桜みたいに花開いた優しい笑顔にまたシャッターを切った。
「男装名くん、花びらついてんで」
「え、どこ?」
「取ったるから、じっとしや」
体を寄せると、男装名くんは静かに目を閉じた。うわぁあ……、なんやのそれ、ちゅーするときの顔やん。恥ずかしなってくるわ。睫毛なっが! 唇ツヤツヤやし、肌も超綺麗。少しだけ顔を近づける。花びら取るためやで! やましいことなんて考えとらんから! 誰に断っとんのか分からんけど、ほんまに、ほんまやから……!
「取れた?」
「あ、ごめんな、今取るから」
必要以上に緊張してまう。恐る恐るといった手つきでそっと花びらを取り、ふっと風に舞わせる。
「ん、取れた」
「んー。ありがとう、康二」
照れ笑いする男装名くんが可愛くて、腕ん中に閉じ込めたくなって、でも、すっごい我慢した。抱きしめたら、色んな感情が溢れてしまいそうやし、なんかいらんこと言ってしまいそうやから。
「康二、屈んで」
「ん? お、おぉ」
言われたままに屈めば、男装名くんが俺を抱きしめてくれた。いや、ちゃうわ。正確に言うと俺の肩に手置いて髪の毛触ってる。
「花びら、康二にもついてたよ」
ふっと、彼は花びらを吹き飛ばした。そんな些細なことですら、きゅんと胸が鳴ってしまう。
ああ、あかんな。気づいてもうた。
メンバーなんやから、こんな感情持ったらあかん。せやけど……。
俺、男装名くんのこと、好き。もう、めっちゃ好き。大好き。
こんなんラウールにも照兄にも言えん。俺だけの、秘密。いつか、いつか必ず伝えたいんやけどな。
「康二、行くよ」
「あ、待ってや〜。置いてかんといて!」
そのいつかが来るまで、この想いは写真の中に閉じ込めてしまおう。花笑む彼の写真の中に。
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「男装名くん、す、好きです。俺と付き合ってください!」
「え、何? どうしたの康二」
「……あ、ごめ、今の忘れて、いや、忘れんといて。あーもう、あかん、全然だめ」
「ふふ。こちらこそお願いします」
「ええっ!? ほんま!? うそ、夢? ドッキリ?」
「嘘でも夢でもドッキリでもないよ」
「うわぁ…あかん、めっちゃ嬉しい。……なあ、男装名くん……、キスしていい?」