叶うならふたり

小さくスマホが震えた。こんな遅くに何だろと思ったら佐久間くんから動画が送られてきたみたいだった。何気なくそれを開けば、眠たそうに目を擦る男装名くんが映っていて。また二人でいるんだ、なんて当たり前に思った。

『愛称〜!』
『なぁに』
『んひひ、眠そー』

『なに撮ってんの〜』と珍しく舌足らずな口調で話す男装名くん。あ、俺この感じ知ってる。酒飲んでるときの男装名くんだ。

『めめに送ってあげんの!』
『んぇ? めめぇ?』
『そー! めめ! ほら愛称、めめになんか言って、』
『んー……、めめ……。んふふ……、すきっ』
『他には他には〜?』
『え? んー……あいたい』

林檎みたいに頬を真っ赤に染めて、上目遣いでカメラを見つめる男装名くん。"好き"とか"会いたい"とかの瞬間に、くたりと目が細められて三日月型に歪むのが、なんか上手く言えないけどいいなって。俺だけの物にしたい、ってこれはさすがに傲慢か。

『んははーッ! 何それかぁいい!』

超楽しそうな佐久間くんの声。これって何? 俺自慢されてんの? なんかモヤモヤする。頭ん中が男装名くんでいっぱいになった。

会いたい。会いたい。会いたい。

気付いたら上着だけ持って走ってた。てか佐久間くんち知らないんだけど。知ってそうな人に片っ端から連絡を入れる。なんなら佐久間くん本人にも連絡した。そしたらいの一番に本人から連絡が返ってきた。

「男装名くん。会いに来たよ」
「……え? なんで、いんのぉ」
「迎えに来たの」
「んふふ、王子様だね」
「佐久間くん、男装名くん連れてっていい?」
「いいけど、見ての通り愛称まあまあ酔ってるからね」
「うん、分かってる。じゃ、おやすみ」

男装名くんの手を引いて、佐久間くんちを後にする。少し肌寒い風が吹く中で、俺と男装名くんとを繋ぐ手だけが妙に熱い。

「男装名くん、あのさ」

不意に立ち止まると半歩先で彼も止まった。振り向く男装名くんの顔を見つめ、言葉を探す。

「俺のこと、どう思ってるの?」

目を丸くして驚く彼の顔が少しずつ、いつものそれに変わっていく。ふっと笑みを浮かべた男装名くんは、踵を返して半歩踏み出した。

「今はまだ……秘密」
「じゃあ、いつか教えてね」

彼を抱き寄せ、そう言葉を返した。今は、真っ直ぐ下ろされているその腕が、いつか俺の背中へとまわされることを信じて。




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「男装名くん、いい加減教えてくれる気になった?」
「覚えてないんだって、その話」
「何回も話してるじゃん」
「記憶にない。本当に」
「そんなこと言ったってダメ。逃がさないから」