同じ物を欲しがる子供のよう

久しぶりに樹と二人で飲みに行った。気付いたら二人ともがっつり酔ってて、俺なんか軽く寝て、暫くしてふらふらと店を出た。
大通りに出てタクシーでも捕まえて帰るかと思っていたが、俺たちの前に止まったのは一台の車だった。
左ハンドルだからたぶん外車。車種とか分かんないけど。ドアガラスが下げられ運転手が顔を出す。
「樹」とただ一言、俺にしがみついてるこいつの名前を呼ぶ。酔っ払いの耳にもストレートに届く澄んだ声がした。

田中「あ、名前じゃん。なんでいんの?」
「樹が迎えに来てって言ったんでしょ。ほら乗って」
田中「へーい。しょっぴーもほら」
渡辺「え、あ、おう」

後部座席に二人で座り、彼女の運転で夜の街を駆け抜ける。

「家、何処ですか? 送ります」

そう言われて少しぽかんとした。てかこの人誰? 樹の彼女? え、彼女呼んで迎えに来てもらってんの?

田中「俺ん家行く。んで、飲み直す!」
「えー……。やめときなよ」
田中「名前も飲も。しょっぴーんちより俺ん家のが近いし、いいでしょ?」

バックミラー越しに彼女と目が合った。まあ、明日仕事ないし。「別に俺はいいけど」と呟けば、樹は嬉々として自宅を案内してくれた。


「ねえ樹重い。自分で歩いて」
田中「いーじゃん別に」
「ほんと重い……」

口では嫌々言いながらも彼女はちゃんと樹を部屋まで連れてった。リビングのソファに樹を放って「シャワー借りるね」と勝手に風呂場へと消えていく彼女。

渡辺「遊び?」
田中「んー、名前のこと?」
渡辺「そー。お前、今本命とかいないって言ってたじゃん」
田中「まあ、本命じゃないけど、大切な子だよ」
渡辺「ふーん」

それってつまり遊びじゃねーの。そう言いかけてやめた。そこまで突っ込まなくてもいっかって。芋焼酎とビールでもう一度乾杯して飲み直してると「あ、樹起きた?」って言いながら彼女が帰ってきた。Tシャツ1枚に生脚とか誘ってんのかって思うけど、他人の女に手出すほど飢えてないし。

「樹、ひと口」
田中「ん」
「ん、ありがと。私もなんか飲もーっと」

樹のビールをひと口飲んで彼女は冷蔵庫からレモンサワーを取り出して缶を開けた。

「テレビで見てて思ってたんですけど、渡辺さんってほんと肌綺麗ですね」
渡辺「え、俺のこと知ってんすか」
「知ってるも何も。Snow Manのファンなんで」
渡辺「え」

樹の女がSnow Manのファンってまたややこしいな。SixTONESじゃないのかよって思ったりした。ちらと樹を見れば「推しは先生」と呟いてた。

「うん。岩本さん好き」
渡辺「SixTONESじゃないんすか?」
「SixTONESも好きですよ。でも強制的に樹担にさせられるんで」
田中「普通に考えて俺だべ」
「樹担なのは聖くんたちだけで十分でしょ。私は北斗くん推したいの」
田中「だめ。絶対俺担じゃないとだめ」
「ほんとやだ。だって樹好みじゃないもん」
田中「はぁ? でもKATーTUNのときは兄ちゃん推してたじゃん」
「聖くんはかっこいいもん」

2人のどうでもいい痴話喧嘩を肴にして酒を飲む。……やば、眠くなってきた。