男装名くんは俺が加入するまでSnow Manの最年少メンバーだった。そのせいもあって、他のみんなは男装名くんのことも俺と同じくらい年下の子として可愛がっている。だけど、俺にとって名前くんはめめと同じくらい優しいお兄ちゃんで、大切な人。
ずっと末っ子扱いされてた男装名くんは、時々あからさまにお兄ちゃんぶろうとする。俺にだけ。そんなことしなくても、と思うけど、そういうことをしたがる姿は可愛いなって思っちゃうし、他のJr.のところに行ってしまうのは寂しいから、させてあげてる。きっと男装名くんも気付いてるだろうけど。
でも、そんな男装名くんも気付いてないことが一つだけある。
「あ、男装名くん。おはよ」
とくんと心臓が跳ねる。後ろ姿でもすぐに分かっちゃう。それくらい、彼を見てるから。
たぶんね、俺、男装名くんが前髪をちょっと切っただけでもきっと気付けるよ。それだけ男装名くんのことが好きだもん。これはLikeなんかじゃないって、少し前に気付いたばっかり。初めての気持ちに戸惑いが隠せないけど、それ以上に甘酸っぱい楽しさが湧き上がってくる。
「おはよう、ってもう夕方だけど。学校、どうだった?」
「どうもこうも。いつもと同じだよ」
「まあ、そうそう珍しいことも起きないよね」
「うん」
「でもそういう当たり前があっという間に非日常になっちゃうんだよね」
そう達観して語る男装名くん。いつもより少しだけ遠く感じてしまう。俺だって早く大人になりたい。でもどれだけ背伸びをしても大人にはなれないし、ずっと子供扱いをされてしまう。大好きな人にだって。
「学校に好きな子とかいないの?」
「いないよ」
「そうなんだ。毎朝下駄箱からラブレターとか出てこないの?」
「それどこの少女漫画? てか古くない?」
「さすがにないか」
からからと笑う男装名くんにつられて俺も笑う。「てか俺陰キャだし」と付け加えれば「ビジュアルはスクールカースト上位だから大丈夫」と返された。
「男装名くんは高校生のとき恋してた?」
「してなかったね」
「したかった?」
「うーん、どうだろ」
答えは煮えきらず「分かんないや」と流されてしまった。「俺とアオハルしよ」なんて冗談でも言えるわけなくて、顔をくしゃくしゃにしながら「男装名くんも意外とウブウブだよね」って笑って言った。
「苗字さん、お願いします」
「あ、はーい。じゃ、いってくるね」
「ん、いってらっしゃい!」
撮影に呼ばれた男装名くん。離れていく背中を見て俺は小さくため息をついた。口元を覆い、誰にも見えないようにしながら男装名くんのいる方へ向けて「好き」と呟いてみる。声が小さすぎて破裂音みたいな音にしかならなかったけど。呟いたそれをもう一度こぼしたため息と混ぜて彼へと飛ばした。早く気付いてよ、俺の気持ち。
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「男装名くん、ぼく18になったよ」
「うん、おめでとうラウール」
「もう結婚もできる年なんだよね」
「そうだね。ふふ、大人になったね」
「男装名くんはまだ俺のこと子供扱いしてるけどね」
「子供扱いは……、たしかに時々してるかも」
「でしょ? ……もう子供扱いなんて出来ないようにしてあげるから。覚悟しててね?」