2020年1月22日。長かったジャニーズ Jr.というカテゴリから外れて、デビュー組という称号を得た。すげー嬉しいのに、なんだろうな。やっぱり1年前のあの日が忘れられない。俺、こんな女々しかったっけ。
「ねぇ、何考えてるの?」
深澤「なぁんにも」
「うそだぁ。……何も、考えられなくしてあげよーか」
深澤「あはは、じゃあ、そうして?」
身体の相性がいいからって理由だけで選んだ彼女は、何も聞いてこなくてひどく楽だった。でも、彼女とはどう転んでもセフレ以上の関係には進まないなって自分の中でしっかりと線引きがされていた。
恋愛は上書き保存。そんなふうに思ってたのに、名前に対する思いだけはどうも違うみたい。名前をつけて保存して、パスワードつけてロックかけて、丁寧に記憶の奥底に閉まってあんの。……1年経っても忘れらんないのがその証拠じゃん? まじ笑えねえ。
「……私、辰哉の本命になりたいなぁ」
あー、無理。絶対無理。「俺、今はそういうの考えてないんだよね」って適当に返して、この子とももう終わりかなあって思って。
深澤「俺、帰るわ」
「え、あー、うん。ばいばぁい」
深澤「じゃあね」
ひらひらと手を振ってホテルを後にして、樹に電話をかける。「今から飲まね?」なんて適当な言葉をかけて。
田中「珍しいすね、師匠から誘ってくるなんて」
深澤「いいだろ、たまには」
田中「なんか最近荒れてるって聞きますし、大丈夫です?」
深澤「別に荒れてねーし、普通よ普通。まあ、有難いことに忙しくはあるけど」
田中「そーすか。あ、名前さん、でしたっけ彼女」
深澤「あー、あいつ。……だいぶ前に別れたよ」
あっけらかんとした口調で言えたか、少しだけ不安になった。まあ、そうでなくともきっと察してくれるだろうけど。
田中「え、そうなんすか?」
深澤「そーよ。8.8んときに振られた」
田中「え、師匠が!?」
深澤「この俺が」
田中「……え、でも、こないだ会いましたよ」
深澤「は!?」
思わず前のめりになった。なんで。俺なんか別れてから1回たりとも会えた試しないのに。メンバーの妹だし、会おうと思えば会えるはずなのに、それすら叶わないのに、なんでたいして仲良い訳でもないお前が会えてんだよ。……どうしようもない嫉妬がふつふつと湧いた。そんなダサい感情を隠すように酒を煽る。
田中「オフの日にたまたま。挨拶したら、デビューおめでとうございますって言われて」
深澤「まじかー……」
田中「いやほんとすんません。でも、名前さんと師匠の話したんすけどなんかそういう嫌な感じとか困ってる様子とかなかったんで、なんか意外です」
なんだよそれ。樹が見たのがどんなだか分かんねえけど、でも、樹は人の感情の機微に聡い方だと思うから、言葉の通りに受け取ることにした。でもだとしたらほんとなんでって感じ。なんで俺と別れたんだよ、あいつ。……今、目の前に名前がいたら、未練ったらしいって笑うのかな。なんかそれでもいい気がしてきた。とにかく会いたい。会って話したい。……こんなちっぽけな願いすら、神様は叶えてくんねえの。わら。