僕らはあまりに近すぎた

『明日、家行ってもいいですか』

そんなLINEが名前から来たのはついさっきのこと。

『いいけど。明日仕事?』
『休み』
『じゃあ今から来たら? タクシー代出すし』
『それはいい。今日もう仕事終わったの?』
『終わった』
『じゃあ今から行く』

業務連絡みたいな淡々としたLINEを終え、ソファに沈む。クッションを抱きかかえて適当にテレビを見ながら時間を潰す。
数十分の後に、インターホンが鳴って小走りで玄関へ向かった。

深澤「いらっしゃい」
「……お邪魔します」

前に見た時より少しだけ痩せた気がした。すんとして躊躇いもなく床に正座する彼女に「ソファに座れば」と促した。

「ここでいい」
深澤「……そう」
「……翔太くんに、殴られそうになったって、聞いた」
深澤「あ、それ聞いたんだ」
「お兄ちゃんから」
深澤「そっか」

言葉が途切れる。姿勢を正して、名前が話し始める。

「わがままでごめん。辰哉くんのこと、振り回して」
深澤「振り回してんのは、俺の方じゃない?」
「……そうかも」
深澤「だよね。俺もごめん。今更謝っても遅いけど」
「……ううん、ごめん」
深澤「俺には名前しかいないから」
「なにそれ」
深澤「まじで思ってんの。めちゃめちゃモテてきたけど、でもどんな子見ても名前のこと思い出してしんどくなんの。俺のことこんなのにしたの、名前だからね? ちゃんと責任とって」

すっと彼女が立ち上がって俺の隣に腰掛ける。

「……責任とってほしいのは、私の方だよ」
深澤「え?」
「自分から、別れたのに、ずっと、辰哉くんのこと、忘れらんないんだもん……。ファンとして、応援しようって、思ってたのに、辰哉くん迎えにくるから、夢だと思ったし、でもちゃんといて、また付き合えて、嬉しくて。なのに、週刊誌に撮られるし、その女の人とキスしてるし、情緒ぐちゃぐちゃになって、嫉妬して、泣いて、人生でこんなに、誰かひとりのこと考えるなんて、後にも先にも、辰哉くんしかいないって」

泣きそうな顔の名前を抱きしめて唇を奪う。好きって気持ちがぐちゃぐちゃになって、欲と一緒に混ざりあって溶けていく。

深澤「俺のこと好き?」
「大好き」

一文字一文字区切って分かりやすくそう伝えてくれる彼女が愛おしくて、触れるだけのキスを落として、愛を囁いた。