雑誌の撮影はいつも緊張する。まあ、撮影に入ってしまえばそんなに、なんだけど、待ってる間がこう、なんかね。しかも今日の撮影、女性誌だから余計にそわそわしちゃう。
「おはようございます」
ラウール「あ、おはようございます」
「あれ、ラウールくんだ」
ラウール「名前ちゃん!? なんで、ここに、いるんですか?」
「お仕事だよ。あ、言ってなかったっけ。私、モデルのお仕事させてもらってるの」
ラウール「え……、そうだったんだ……」
「ふふ、ラウールくんにも知ってもらえるよう、もっともっと頑張るね」
ポジティブな発言と天真爛漫な笑顔にきゅんてした。スタッフさんに呼ばれるまでなんとなく二人でいたら「美男美女で画になる」って褒められた。嫌な気はしない。
「ラウールくん、お疲れ様」
ラウール「お疲れ様です」
「今、帰り?」
ラウール「あー、うん」
「私も。お兄ちゃんが迎えに来てくれるんだ」
ラウール「え、めめが?」
「うん。今日お休みなんだって。って、ラウールくんだったら知ってるか」
ラウール「あ、うん」
なんとなく俺も隣にいて、適当に「めめ見てから帰ろっかな」なんて言う。ほとんど毎日のように会ってるのにね。
目黒「名前お待たせ」
「お兄ちゃんありがと〜!」
目黒「なんでラウールいんの?」
「撮影前後だったの」
目黒「へー」
わ、本当にめめの妹さんなんだ。別に疑ってたわけじゃないけど、なんか実物を目の前にしていっそう驚いてしまう。
目黒「何ぼーっとしてんだよ。ほらお前も乗るの」
ラウール「え?」
目黒「送ってく」
ラウール「え!? いいの!?」
目黒「いいよ、別に」
軽く笑って車に乗せてくれるめめ。俺だけ後部座席で、名前ちゃんは助手席に座った。流れていく景色をぼんやりと眺めながら、2人の会話に耳を傾ける。今日の仕事のこととか、学校でのこととか、他愛もない話だけど心地よくてついうとうとと舟をこいでしまう。
目黒「ラウール、着いたぞ」
ラウール「え! あ、うん、ありがと!」
目黒「寝てたろ」
ラウール「うーん、ちょっとだけ」
「お疲れ様。また明日、学校で会おうね」
ラウール「あ、うん! またね」
「おやすみ」
目黒「おやすみ」
ラウール「おやすみ」
家の前で下ろしてもらって、めめの車が走り去るまでの間手を振ってみた。そしたら名前ちゃんも同じように手を振っててくれて、なんだか凄く嬉しかった。こんな単純なことできゅんってしちゃうから、恋愛偏差値が低いって言われるのかな。……でも、嬉しかったんだもん。仕方ないよね。そう自分に言い訳して家の中へ入った。