2023.07




久しぶりにふたりして早い時間に仕事が終わったらしい。他愛もないLINEの中で『今から帰る〜』と言われて、お! と思ってしまった。

『私もう家✌️ 自分の部屋だけど』
『優陽も仕事終わんの早かったんだ。お疲れ様』
『ありがとう! ひかるもお疲れ様!』
『飯は? もう食べた?』
『うん、もう食べちゃった。今それスノ見てるとこ』
『飯とか済ませたらそっち行っていい?』
『いいよー』

ゆるいスタンプを返したところでひかるからの返事が切れた。車乗ったのかなと深く気にもとめずテレビのひかるに目を向ける。変装してるのにかっこいいってなんかずるい。ラウちゃんの外国人変装も様になってて面白いし。

「優陽いる?」
「ん、いるよー」
「ただいま」
「おかえり」

当たり前のように私を抱きしめる彼の体が少し温かくて「お風呂上がり?」と聞くと「そう。優陽に会いたくてちょっと急いだけど」とはにかまれた。

「うわ、あ、これさあ、まじでびっくりした」
「ふふ、ひかるにも黙ってたもんね」

テレビではちょうどこーじくんと私がロケに出てるところが映されていた。トリリオンゲームの番宣ね。

「言ってくれれば良かったのに」
「ひかるいないしなぁって思って」
「でも知っときたかった」
「サプライズでした〜」
「てかこの後、ここでトリリオンゲーム見てもいい?」
「うん、いいよ。ちょっと照れくさいけど」
「やばい、ドキドキしてきた」

それスノを見終えて、そのままトリリオンゲームへと気持ちをシフトさせる。自分のドラマを誰かと見るのって初めてかも。なんだか緊張する。

「あ、始まった」
「ドキドキする……」

ドラマが始まるとふたりして言葉は消えた。テレビに釘付けになる子供のようにじっと一点を見つめて、ストーリーを追う。「おー」とか「わあ」とか小さくひかるから洩れる声が楽しいし、撮影には参加しているもののひとつの作品として世に出されているものを見るのは上映会以来で、テレビで見るとまた違った面白さがあって胸が高鳴った。
CMに入ると、ひかるは小さく息を吐いて「ねえ」と呟いた。

「役なのは分かるけど、あの服露出多すぎない?」
「可愛いでしょ?」
「……うーん。かわいい?」
「桐姫はあれくらいの格好してないと」
「めめとも近いし」
「だってそういう役だし」
「分かるんだけど……!」

感情は追いついてないらしい。やきもち妬きなひかるらしくぎゅうぎゅうと私に抱きついては甘えて。でもドラマはしっかりと見る。CMの時だけ私に話しかけて、甘えるようにキスを強請って。それに応えると嬉しそうに彼は笑った。

「原作読んだ?」
「読んでない」
「ふっかさんとかに聞いてみ? 来週からもっと凄くなるよ」
「え、これ以上やばくなんの?」
「ふふ。蓮くんに圧かけたらダメだからね」
「分かってるけど。目黒のこと蓮くんって呼んでんの?」
「うん」
「やだ」
「やだって何」

子供みたいな嫌がり方に思わず笑ってしまった。すねすねのひかる、いや、ひーくんは私の肩に頭をぐりぐり押し付けては「嫌だ」と繰り返した。でも今更呼び方変えることも出来ないし、私は笑って「ひかるかわいいね」って彼の頬にキスをした。