2023.09



『飲み過ぎないように』
『ひかるもね』

そんなLINEをしたのは数時間前のこと。私はドラマの打ち上げで、ひかるはメンバーやスタッフさんとのご飯会で、それぞれ飲みの席へと来ていた。個室居酒屋で出された料理を食べながら、勧められたら喜んでお酒をいただく。もちろんひかるとの約束通り、飲み過ぎない程度に。
そっと席を外して御手洗いに向かう。

「ちょっと飲みすぎかなぁ……」

鏡を見ながらほんのり赤らんでる頬に触れる。この赤はチークじゃないってのは私が一番分かってる。……お茶にしよ。たぶん今の顔、ひかるに見られたら怒られちゃう。……ひかる、楽しんでるかな。
小さく息を吐いて御手洗から出ると、同じタイミングで隣のドアが開く。

「わっ、ごめんなさい……」
「こちらこそ。……って、え、優陽?」
「え? ……わ、ふっかさん!」
「久しぶり〜、元気?」
「元気だけど、えっ、わぁ……、びっくり……」

目の前に現れたのはふっかさんだった。彼は「大きくなったね〜」なんて私のことを子供扱いしてぽんぽんと頭を撫でた。へにゃりと笑う彼の顔は少しとろんとしていて、優しい香水の匂いよりも先にお酒の匂いが香った。

「ふっかさん、今日ここで飲んでるの?」
「そうだよ〜」
「メンバーの皆さんで飲んでるんだよね?」
「うん、照もいるよ」
「知ってる。さすがにお店までは知らなかったけど」
「ふっか、そろそろお開き……」

後ろから掛けられた声に振り返る。だってその耳馴染みの良い声は、今一番会いたい人の声だったから。

「優陽?」
「ひかるだ」
「え、今日の店ここ?」
「そうだよ〜」

駆け寄ってきた彼はすぐに私とふっかさんの間に入ってふっかさんをじろりと睨んだ。

「ふっか、優陽に何かした?」
「してないわ! ちょっと立ち話したくらい」

けらけら笑いながらふっかさんは「俺、先戻っとくから」と言い残して自席へと戻っていった。ひかるは私を抱きしめて深く息を吐いた。ひかるもお酒くさいから、相当飲んでるとみた。

「誰かに見つかったら大変だよ」
「見つかってもいいよ。離したくない」
「だめ。良くない。……ひかる、今日はこれで終わり?」
「終わり。帰るだけ。一緒に帰ろ?」
「だめだって。部屋いていいから先帰ってて」
「すぐ帰ってくる?」
「すぐ帰るよ」
「約束」
「ん、約束ね」

大きいわんこみたいな彼をよしよしと撫でてあげる。大人っぽくてしっかりしてるイメージの岩本照からは少し離れてる甘えたで寂しがり屋なひかる。ひーくんって感じ。私だけに見せてくれてるのかなって思ったら嬉しくなって、会えた嬉しさも相まって触れるだけのキスを落とした。

「続きは帰ってからね」

そう言って、最後にぎゅってしてお互いの席へと戻った。私の方の打ち上げもいい感じにお開きムードになっていて、数分後にはお会計をしてそれぞれ帰路へと着いた。