2022.02



「今度さ、映画出るんだよね」
「え、すごいじゃん。おめでとう」
「そうなんだけどさ」

珍しく口ごもるひかるに「どーかした?」と尋ねれば、ぎゅうっと後ろから抱きしめられる。

「嫌な仕事だった?」
「んーん、嫌とかじゃないんだけど」
「うん」
「恋愛モノだからその……」
「ひかる恋愛モノ出るの!?」

きゃーとわざとらしく驚いて見せれば彼は分かりやすくむすっとして唇を突き出した。

「思ってたのと違う」
「えー? ひかるみたいに拗ねてほしかった? 女の子と近づくのやだーって?」
「しないのは分かってたけどさあ」
「相手の子誰?」
「めるる」
「めるるちゃん!? すごいすごーい! 可愛い子だ」
「ねーえー」

肩に顎を乗せて、ぎゅうって私を抱きしめる腕に力が入る。分かりやすく拗ねてる彼が愛おしくて「楽しみにしてるね」って髪を撫でてあげた。


***


それから数日して、映画の情報が解禁された。『モエカレはオレンジ色』って、ああ、少女漫画の実写かぁ。消防士さんの格好をしたひかると制服に身を包んだめるるちゃん。身長差とか、雰囲気とか、ポスターを見た感じはすごく良くて、それを目の当たりにしたときは少し胸がチクッとした。
もちろん私も恋愛モノの撮影で俳優さんと絡むことだってあるし職業柄仕方ないんだけど、もしかしてひかるも毎回こんな気持ちになってたのかな。

「ひかる、ちゃんとご飯食べてるのかな」

会いたいと思っても撮影期間はどうしても忙しくなるし、主題歌もSnow Manが担当するみたいでRECにMV撮影等やることは山積みらしい。
同じマンションに住んでるとはいえ、顔を合わせることもほとんどなく、毎日のようにしていたLINEも減っていた。