プロモーション期間になると、どうしてもツーショットを見かける機会は増えた。CanCamの表紙を2人で飾っているのを見かけた時には何気なく手に取ってレジまで持っていったけど、帰って雑誌を見ているうちに何かがぽきりと折れる音がした。
上手く言葉にはできない感情が心を支配する。気を紛らわすためにコンビニへ出かけてお酒とチョコとアイスを買って家へと戻る。自宅の玄関の前でしばらく見ていなかった背中を見つけた瞬間「あ」と小さな声を洩らした。
「あれ、優陽?」
「ひかる、今帰ってきたの?」
「うん。こんな時間にコンビニ?」
「えへへ。お酒飲みたくて」
「そうなんだ。……俺も晩酌付き合おうかな」
よく見ればひかるの手にもコンビニの袋があって、中にはビール缶とチョコが入っていた。
「同じの買った」
「え? 優陽、ビール飲まないでしょ?」
「ビールじゃなくてチョコの方。ほら!」
「わ、ほんとだ」
くしゃくしゃの顔して笑うひかると一緒に彼の部屋に入る。2人並んで靴を脱いで手を洗ってうがいをした。
「あ、先風呂入る?」
「あー。自分のところで済ませてこようかな」
「じゃあ終わったらそっち行ってもいい?」
「え? いいけど、ひかるのとこ戻ってくるよ?」
「いいの。危ないから」
「隣じゃん」
くすくす笑いながら「後でね」って伝えて部屋を出た。
自室の冷蔵庫に買ったものを入れて、シャワーを浴びる。お風呂から上がると、すでにひかるは我が家に来ていて「ドライヤーするから持ってきて」って言われた。言われた通りにドライヤーを持ってひかるの膝に腰を下ろす。
「おねがいしまーす」
「ん。暑かったら言って」
「はーい」
ひかるの大きな手でわしゃわしゃと髪の毛が乾かされていく。気持ちよくて眠たくなってくる。……あ、雑誌出しっぱなしだった。テーブルの下に雑誌を片付けて、気にしてないふりして目を閉じた。
「乾いてないとこない?」
「ん、ばっちりです!」
ぱたぱたと手で仰ぎながら冷蔵庫へ向かう。ひかるも後ろからついてきて2人して冷蔵庫の冷気を浴びた。私のレモンサワーとひかるのビール缶をとってソファへと戻る。暑いって言ったのに横並びで肩寄せて「乾杯」って缶を傾けた。
「ひかるがお酒飲んでるの珍しいね」
「んー、たしかに。久しぶりに飲んでる」
「何かあった?」
「んーん。何かあったのは優陽の方じゃないの?」
「え?」
彼の方を振り向けば、思ってた以上に真剣な顔してこっちを見つめていて、思わず息を呑んだ。
「……何もないよ」
「うそ」
「嘘じゃないもん」
「優陽嘘つくの下手だからすぐ分かるよ」
ぷくと頬を膨らませれば「どうしたの」と優しい声が耳を撫でた。
「もやもやした」
「え?」
「ひかるが、めるるちゃんと仲良さそうにしてるの」
「えぇ?」
「ひかる。顔、めっちゃ緩んでる」
へにゃへにゃの笑顔で私を見つめるひかるに、そう伝えれば彼は「だって嫉妬してくれたの、初めてでしょ」って呟いた。
「……やっぱりこれ、嫉妬なのかな」
「え、気付いてなかったの?」
「もしかしたら、ひかるも私が恋愛モノやるときこんな気持ちだったのかなー……くらいでしか」
そもそも嫉妬なんて無縁だと思ってた。そういうものだからって一線を引いてたつもりだった。……ただ気付かないふりをしてただけなのかもしれないけど。
「優陽が恋愛モノやるときなんか、たぶんそんなじゃ済まないから」
ひょいと身体を持ち上げられ、彼の膝へと招かれる。腰にまわった手は私が動こうともびくともしない。
「他の男と絡む度に頭おかしくなる。キスシーンとか見る度にもやもやするし、相手の男が優陽のこと好きになったらって、優陽もその人のこと好きになったらって毎回思ってるよ」
「毎回?」
「毎回。ドラマとかだったら毎週に近いくらい」
「大変だね」
「ねえ、他人事」
「いや、うん。ごめん。思ってたより深刻でびっくりした」
「重い?」
「んー。まあそういうところも含めてひかるが好きだから」
そう言ってキスすると「それってつまり重いとは思ってるんだ」って言われて、口封じのためにまたキスをした。ほんのり香るお酒の匂いが強情な心を解して、会えなかった時間を埋めるように何度も唇を重ねた。