翔太くんとお泊まり
渡辺「え、部屋がない?」
マネージャー「手違いで、シングル1部屋しか取れてなかったって……」
「空いてる部屋もない?」
マネージャー「今日はどこも満室で……」
「じゃあしょうがないね」
渡辺「は? しょうがないで済まねえだろ」
ぶすっと不貞腐れる翔太くん。さっきまでのロケでは凄くはしゃいでたのに。ちらと私を見て「お前、平気なわけ」と聞いてくる。平気かと言われたら……、ちょっと微妙だけど、知らない人と相部屋になるわけじゃないし、別に大丈夫かと思うところもある。
「仕方ないじゃん」
翔太くんの荷物を持って部屋の鍵を受け取る。「大丈夫だよ」とマネージャーさんに手を振って部屋へ向かえば「待てよ」と彼が後を追ってきた。
部屋に着いてくたりとソファに倒れこむ私を置いて翔太くんはとっととシャワーを浴びに行った。戻ってきた彼はソファへ腰掛けスキンケアを始めた。
「私もシャワー浴びてこよーっと」
そう言って彼の隣から退きシャワーを浴びた。濡れた髪をタオルで拭い、ドライヤーを片手に部屋へ戻る。
渡辺「ここ座れ」
「はーい」
彼の隣に腰掛ければ、すぐにスキンケアが始まる。翔太くんの持ってきたケア用品の数々が私の顔に塗りたくられる。ぷるぷるのつやつやのもちもちの顔になるんだよね、翔太くんにしてもらうと。
渡辺「それ、貸して」
「え?」
渡辺「ドライヤー」
「あぁ、はい」
ドライヤーを手渡せば彼はそのまま私の髪を乾かし始めた。
「至れり尽くせりだね?」
渡辺「別に。てかお前本当にいいのかよ」
「え?何が?」
渡辺「部屋、1個なの」
「あぁ、私ソファで寝るからいいよ」
渡辺「よくねえだろ。明日もロケあんのに」
「でも翔太くんベッド使うでしょ?」
渡辺「……一緒に寝る?」
「え?」
渡辺「昔もそういう事あったろ。それにお前寝相悪いからソファから落ちそう」
「そんなことないよ」
たしかに、複数人で雑魚寝なんてことも少なくはなかったけど……。でも、今はなんだろ、大人になったからなのかな。ちょっとだけ、気にしてしまう。それと寝相悪くない。
渡辺「とにかく、寝るぞ」
彼は私の手を引いてベッドへと歩を進めた。シングルベッドにふたり。雑魚寝するときは1人1つの布団が用意されてたし、前にさっくんと一緒に寝た時はキングサイズだったから……、シングルの近さは、ちょっと緊張するかも。
「翔太くん近い」
渡辺「……シングルなんだから仕方ないだろ」
「そう、だね……」
渡辺「落ちるぞ」
少し離れたらその分を埋めるように翔太くんが私を引き寄せて抱きしめる。翔太くんの匂いが胸いっぱいに広がって、なんだか不思議な感じがした。でも、凄く落ち着くその匂いに、ふわふわと睡魔が押し寄せてきた。ふぁ、とひとつ小さな欠伸をこぼして目を瞑る。
渡辺「寝るの早すぎだろ」
夢の中でそう彼が笑っていた。