Rely on
マネージャーから奏依が熱出したからみんなも気をつけてと連絡が来たのは今朝のこと。んで、みんなしてお見舞いに行くって騒ぎ出して止められた。あんま大勢で行っても煩いだけだし、風邪うつったら困るし。
深澤「んじゃ、代表でもっさん。頼んだよ」
岩本「ん、分かった」
仕事を終えすぐに車を飛ばした。途中ドラッグストアに寄って風邪に効くもの買って奏依んちに向かう。
佐久間から教えてもらった部屋番号を押して奏依を呼び出す。寝てたらどうしよ。
「……はい」
掠れた声がインターホンから響いた。「俺。照。開けて」と短い言葉を紡げば、静かにロックが解除された。
エレベーターに乗って奏依の部屋に向かう。インターホンを鳴らしても誰も出なくて、部屋の中で奏依が倒れてるんじゃないかってドアノブ握ったらすんなり開いたから勝手にお邪魔した。
岩本「奏依」
ソファで横になっている奏依を見つけ傍へ駆け寄る。頬に触れるとまだ熱が高くて、浅く呼吸してる姿も苦しそうで顔を歪めてしまう。
岩本「奏依、触るよ」
膝からすくい上げ彼女を姫抱きにして寝室まで連れていく。買ってきたばかりの冷えピタを彼女の額に貼り、濡れタオルを用意して軽く汗を拭いてやる。
「……ひかる、くん?」
岩本「ん。……無理しないで。まだ熱引いてないんだし」
俺が来たせいで奏依を起こしちゃったんだと思うけど。困ったように眉を下げて彼女は俺を見る。今にも泣き出しそうな潤んだ瞳は、普段の奏依からは想像できないくらい弱々しくて、こっちまで不安になる。
岩本「今日ちょっとでもなんか食べた?」
「……んーん」
食べてない、と呟く声は、怒られることを察した子供みたいに小さかった。そんなことで俺怒んないんだけど。
岩本「お粥、作ってくるからちょっと食べよ」
「……うん」
ぎゅっとシナモンを抱きしめながら、小さく頷く彼女の髪をぽんと撫でて席を立つ。
すぐ出来るレトルトのお粥をレンジでチンしてる間、なるべく奏依の傍にいて手繋いだり汗で張り付いた髪の毛を避けてあげたりした。傍に誰かいるだけでちょっと安心することもあるだろうから。
岩本「お粥出来たよ。起きれる?」
「……ん、おきる」
背中に手を添えて彼女を起こしてあげて、出来たてのお粥をあーんしてあげる。今日の奏依はそんなことすら素直に受け入れてくれるから、人から見たら過剰だと思われるかもしれないくらい手間を焼いてしまう。
「……おいし」
岩本「そう? 良かった」
全部とはいかないけど半分くらいは食べてくれた。薬を飲ませて、あとは安静にさせておく。食器を片付けようとしたら「ひかる、くん……」と甘えた声が後ろ髪を引く。
岩本「んー?」
「ん……」
布団の中から伸ばされた手を握り、奏依の傍に腰を下ろす。それだけでふにゃりと柔らかい笑みを浮かべる彼女が愛らしくて、思わず顔が緩んでしまう。
岩本「どこも行かないから」
「ん……」
髪を撫でながら「おやすみ、奏依」と呟く。すぐに小さく寝息を立て始める彼女を見て、そっと食器を片付けて、また彼女の傍へ戻る。目覚めた時に誰もいなかったらきっと寂しいだろうから。
岩本「奏依はさぁ、甘え下手なんだよね。もっと頼っていいんだよ。俺にも、ほかのメンバーにも」
聞こえてるかどうかはともかく、ぽつりぽつりと呟いて髪を撫でてやる。
ぐるりと部屋を見渡せば、ふっかが取ったシナモンのぬいぐるみとか、翔太があげたって噂の香水とか、奏依の部屋には俺たちとの思い出で溢れてた。
岩本「奏依がSnow Manを大好きなように、俺らも奏依のこと大好きなんだよ」
奏依がどのくらいそれを自覚してるかは分かんないけど。うちの姫は鈍感だってよく佐久間が言ってるけど、本当にその通りかもしんない。
岩本「早く元気になって」
そう願い、奏依の手を握った。
翌朝、元気になった彼女が「おはよう、照くん」と笑っていたのを見て俺からも笑みがこぼれた。