ある日の深澤くん


今日は俺が一番早く上がりだったらしい。普段あんなにうるさいシェアハウスが今日はやけに静かだった。
風呂入ろうかな。一番風呂。

がらがらとドアを開けると「え?」と誰かの声が聞こえた。

「ふっか?」
深澤「え、うわ、奏依!?」
「……一緒に入るの?」
深澤「……ねぇ、それって俺のこと誘ってんの?」
「そんなわけないでしょ。ほら、出て。さすがに恥ずかしいから」
深澤「はーい」

おちゃらけたふりして浴室から出た。そして、その場に座り込んだ。ねぇ、俺普通に出来た? てかあの子危機感なさすぎじゃない? 白濁の入浴剤のせいでほとんど見えなかったけどさあ、火照った身体とか、つるつるで真っ赤なりんごみたいなほっぺとか、濡れた髪の毛とか、全部が全部色っぽくて男の情欲掻き立てるって、きっと分かってないんだろうなぁ……。

深澤「……ねえ、奏依」
「なーにー?」
深澤「風呂上がったら俺の部屋来て」
「はーい」

それだけ言い残して部屋へ戻る。悶々とした気持ちを抑えるために1回抜こうかと思ったけど……やめた。

「ふっかー、入るよー?」
深澤「へーい」
「おじゃましまーす」
深澤「奏依、髪の毛乾かしてないでしょ。ほらここ座って」
「んふふ。お願いしまーす」
深澤「もー」

ソファに奏依を座らせて、ドライヤーで髪を乾かしてあげる。俺にこんなに尽くさせるの奏依くらいじゃん? あとでご褒美にちゅーしてもらお。
ふわふわの髪の毛。肩につくくらいのボブだと簡単に乾いてしまう。たまにはロングも見たいんだけど。
……てかうなじ、綺麗。ちゅっ、と唇を押し当てたら「ひゃっ!」と可愛い声が奏依から漏れた。

「ふっか〜! 何かしたでしょ」
深澤「可愛いからキスしちゃった」
「……痕とか、残ってないよね」
深澤「んふふ、どーかな」
「……ちょっと阿部ちゃんにみてもらってくる」
深澤「だめ。行かせない」
「じゃあ付けたんだ?」
深澤「付けてないよ。付けてないから行かないで」

ぎゅっと後ろから抱きしめて俺もソファに座る。

深澤「今日、俺と寝よー?」
「どうしたの。珍しいね」
深澤「だっていつも佐久間とかラウールとかと寝てんでしょ?」
「たまに康二と目黒もね」
深澤「そんなん羨ましすぎでしょ。俺も奏依と寝たいの」

甘えるように首を埋めれば「シナモン取ってくるね」と頭を撫でられた。「俺も行く〜」とくっついたまま立ち上がれば「歩きづらいしお風呂入ってきなよ」と笑われた。

「ふっかの部屋で待ってるからさ」
深澤「帰ってきたら俺の髪も乾かしてくれる?」
「起きてたらね」
深澤「起きててよ。お願い」
「はいはい」

そう約束して部屋を後にする。
風呂から上がって部屋に戻ったらソファでシナモロールを抱きながら眠たそうにしてる奏依がいた。

深澤「おまたせ」
「ん、んぅ……」

眠たそうなお姫様に目覚めのキスをひとつ。ふたつ。みっつ。徐々に深くしていくと、奏依はぎゅっと俺の服を掴んだ。

「ん、んん……っ、ふっかぁ……」
深澤「おはよ、お姫様」
「……ん、ぅ、ねてない」
深澤「ふふ、はいはい。ほら俺の髪乾かしてくれるんでしょ」
「ふぁ……、ん、そうだったね」

あくびまじりの返事に笑ってしまう。髪乾かしたら寝よ。本当は夜更かししたくてしょうがないけど、今日は一緒に寝れるだけで充分ってことにしとこ。……たぶん明日の朝辛くなんだけどね。