深澤くんとゲームセンター

早い時間に仕事が終わったからふらりと立ち寄ったゲームセンター。さーて、何からいきますかね。新しい台も出てるだろうし、腕試しも兼ねてね。

深澤「……あ、これにしよ」

新しいの出てたんだ。サンリオってシーズンごとに新しいの出てない? そういえば、奏依のシナモロールってもう何年使ってんだろ。あれ取ってあげたのってたしか奏依が今のラウくらいの歳の時だから……。7.8年くらい? んでほとんど毎日一緒にいんでしょ?

深澤「うん、まあこんなもんか」

さくっと新作のシナモロールを取って、ついでになんかつぶらな瞳のかにのぬいぐるみも取った。こういうゆるいの、奏依好きそうだなって……。頭ん中奏依のことばっかり。

「あれ、ふっかじゃん」
深澤「奏依? 仕事は?」
「終わったよー。早く帰っても暇だからゲームセンター来たんだけど」
深澤「俺も、同じ感じ。あ、これ奏依にあげる」
「わ、シナモン! ふふ、可愛い」
深澤「んでしょ〜。今一緒に寝てるやつもうけっこう前のじゃん?」
「うん、そうだね」
深澤「だから新しいの」

俺の言葉にきょとんとする奏依。なんで? って顔に書いてある。いや、それは俺のセリフなんだけど、え、ダメだった?

深澤「ダメだった?」

思わずそう聞くと「ううん」と首を振って否定された。

「新しいシナモンもベッドに置くけど、一緒に寝るのはいつものあの子だよ」
深澤「え、あれでいいの?」
「あの子がいいの」
深澤「なぁんで?」
「だって……、初めてふっかがくれたんだよ? 大切にするよ」
深澤「うわ、今きゅんってきた。今ならなんでも買っちゃう」
「それはちょろすぎない?」

くすくす笑う顔が可愛すぎてちゅーしたくなった。外だから我慢しないと。ファンに見られたら大変だし。

深澤「まじでなんか欲しいもんとかあったら言ってね」
「ありがと。特にないけど」
深澤「ないんかい」
「ないよ。むしろ貰いすぎてるくらいだもん」
深澤「え、ほんと? そんなにあげてる?」
「うん」

やばい、自覚なかった。まあたしかに、ゲーセン行くたびに奏依用にって何か取ってたからなぁ。

「あ、ふっかこっち」
深澤「何?」
「プリクラ撮ろ」
深澤「え?」

我ながら間の抜けた声。だって奏依からそんなの誘われたことなかったからさ。びっくりした。職業柄撮られることには慣れてるけど、これはまた別。小さな箱の中で奏依とふたりきりは緊張してしょうがない。

「どれがいい?」
深澤「どれでも」
「じゃあ適当に選ぶね」

画面を凝視する奏依。それを凝視する俺。「なんでプリクラ?」と今更ながらに呟けば「いつもクレーンゲームばっかりだから。たまには違うことしてみようかなって」と笑われた。
機械の指示に合わせてポーズをとっていく俺たち。歯が痛いやつとか無難にピースとか、それスノで勉強したやつがほとんどであっという間に最後の1枚になる。ああ、せっかくだし……やっとく?

『3.2.1......』

シャッター音が過ぎていく中で俺と奏依、見つめ合った。奏依は真っ赤な顔をして「ふ、ふっか……!」って弱々しい声漏らして。

「キス、するなんて聞いてない」
深澤「言ってないもん」
「びっくりした……」
深澤「んふふ。これ絶対入れよ」

奏依の手を引いて落書きコーナーに入って肩寄せて落書きして、プリクラが現像されるのを待つ。

深澤「おー、上手く撮れてる」
「……恥ずかしいから誰にも見せちゃダメだよ」
深澤「見せねーよ」

こんな可愛い顔、誰にも見せたくない。わがまま? 知ってる知ってる。でもこれくらいのささやかな独占欲は許してもらいたいよね。誰にことわってんのか分かんないけど。

深澤「次は俺に付き合って。奏依の好きなの全部取って帰ろ」
「ふっかまた出禁になるよ?」
深澤「奏依のためなら!」
「やめてください。わら」
深澤「わら、って真顔で言うな。わら」

そんなおふざけをしながら、まだ少し、あと少しと彼女との時間を独占した。帰り道も帰る家も一緒なんだけどね。