渡辺くんとの帰り道
ジムからの帰り道。シャワーを浴びてから出てきたのに夏の暑さでジリジリと焼かれ、汗がこぼれていく。もう夕方だぞ。日沈むのになんでこんな暑いんだよ。と内心悪態をつきながら進めば、丁度よく開いたスーパーの入口から見知った顔が出てきた。
「あ」
渡辺「うわ」
「人の顔見てその反応はどうなの」
渡辺「お前もだろ。つーか何、その荷物」
「今日の晩御飯の買い出し」
渡辺「こんな食わないじゃんお前」
「私のじゃないよ。今日はラウがいるから」
渡辺「ああ、あいつ食うもんな」
両手にエコバッグを担ぐ奏依を横目に、何入ってんだこれと不思議に思う。ラウールに何食わせる気だよ。
渡辺「貸せ」
重そうな方のエコバッグを奪うと「え?」と間抜けな声が奏依から洩れた。いや、なんだよ。「え?」って。
「それ、重いよ?」
渡辺「おー」
「翔太くん折れるよ?」
渡辺「折れねえよばーか」
まじで重いじゃん。でもこんくらい余裕だわ。最近鍛えてるし。舐めんなよ。つーか奏依の方が細くてひょろひょろしてんのに何言ってんだ。
「……ありがとね」
渡辺「今日、飯何?」
「今日の現場寒かったからグラタンにしようかなーって」
渡辺「ふーん」
「外はめっちゃ暑いんだけどね」
渡辺「お前のグラタン、ブロッコリー入ってるよな」
「野菜の芯なら細かくしとくよ?」
渡辺「粉微塵で」
うはは、とどちらともなく軽い笑い声が洩れる。横に並んで他愛もない話をして帰路へつく。
夕食は言ってた通りグラタンだった。ブロッコリーの芯が細かく刻まれて入っているのを見て、まあこのくらいならと妥協した。
渡辺「お前今日、俺の部屋来る?」
誰もいない隙を見計らってぽつりとそう呟く。奏依は少し考えた後「うん、いいよ」と返した。
素直じゃない俺らの約束。今晩22時に俺の部屋で。