岩本くんとコンビニ

岩本「奏依、どこ行くの」

リビングで筋トレしてる俺の横を横切って玄関へ向かおうとする奏依。「どこ行くの」と聞けば「あ」と言いたげな顔をされた。理由はなんとなくわかってる。

「コンビニ。アイス食べたくなってきてさ」
岩本「もう遅いし明日にしたら?」
「えー……。すぐ行ってくるよ」
岩本「だめ」

これのせい。だから見つかりたくなかったんだろうね。でももう外暗いし、1人で外出るなんて絶対だめ。危ないから。

「……どうしても、だめ?」

俺の膝に擦り寄って、上目遣いでこっち見んの。……ずるいよなぁ、俺その顔されたら何も言えないもん。

岩本「……奏依さあ、俺がその顔に弱いの分かっててやってるでしょ」
「あ、ばれた?」
岩本「……俺もついてっていいなら、いいけど」
「え、ほんと? じゃあ行こ。アイス買ってあげる」
岩本「何それ、俺アイスでつられたみたいじゃん」

あははと笑えば奏依もつられて笑った。

「チョコにしとく?」
岩本「チョコアイスにする」

熱帯夜。その表現がよく似合う夏の夜。2人で横に並んで片道5分の道を歩く。
あっという間に着く距離を少し残念に思うけど、2人きりになれるだけいいかと自分を慰める。

「あ、涼しい」
岩本「ほんとだ」

自動ドアが開いた瞬間に吹き込む冷風で涼みながら、奏依の後に続く。真っ先にアイスコーナーへ向かう彼女。どんだけ食べたかったんだよって思わず笑ってしまった。

「照くんどれにする?」
岩本「チョコのやつ」
「ブレないね」
岩本「まあね。奏依は?」
「これ!」
岩本「いちご? 期間限定じゃん」
「期間限定に弱い……」

そんな事を言いながら奏依はまだいくつかアイスを籠に入れていた。

岩本「何個買うわけ?」

思わずそう尋ねれば奏依は満面の笑みで「10個!」と言った。

「だって皆で食べた方が美味しいじゃん。あ、でも私は今日1個食べるからー……11かな」
岩本「買いすぎ。奏依のだけにしな」
「えー」
岩本「今度31連れてってあげるから」
「ほんと!?」
岩本「ほんと。てかそんなんでいいの?」
「すっごい嬉しい」

おとなしく自分の分以外のアイスを戻したかと思えば、今度はお菓子コーナーへ向かったけど。まだ何買う気?

「新作のチョコないね」
岩本「アイス溶けるから早く帰ろ」
「うん」

レジを済ませて早足で帰らなきゃいけないところをちょっとだけゆっくり歩く。と言っても結局5.6分くらいで着くんだけど。永遠になればいいのに。

岩本「今度から、夜どっか行く時は俺に言って」
「過保護すぎだよ」
岩本「過保護にもなりたくなるの」

家に帰ってから誰にも見えないようにこっそりキスをした。

「アイス溶けるよ」
岩本「もうちょっとだけ」
「……アイス、冷凍庫に閉まってから」
岩本「ん、分かった」

冷凍庫にアイス閉まってからまた彼女の唇を奪った。熱帯夜に浮かされる。「もうちょっと」を何度も繰り返して、結局2人ともアイスを食べないまま俺の部屋へと連れ込んだ。