俺だけ見ててよ

目黒「おやすみ」
「ん、おやすみ」

おやすみのキスをして、目を瞑って数分。俺の腕の中で微かな寝息を立てる奏依ちゃん。彼女は家でも外でもよく眠る。仕事も忙しくなってきてるし、疲れてんのかな。それにしてもほんと寝るの早い。ちょっと話そうかなとか、キスしたいとかそういう気持ち全部置いてかれた感じ。……まあ、さっきまで散々やったから我慢するけど。ただ、すぐに寝返りを打って向こうを向くのはだめ。無理矢理抱き寄せてこっちを向いてもらった。だって奏依ちゃんの寝顔、ずっと見てたいじゃん。

目黒「……可愛い」

奏依ちゃんを見つめて髪を撫でてやると、嬉しそうに寝顔が綻ぶから、もっとしたくなった。……これ以上は、我慢。その細い身体を壊さないように抱きしめて目を瞑る。明日も早いんだった。

目黒「……寝れねえ」

今までこんなことなかったのに、なんでだろ。戯れに彼女の髪を指で弄びながら、眠気が来るのを待つ。……待てども待てども一向に眠気は襲ってこなくて時間ばかりが過ぎていく。
羊でも数えようかな。……今更そんなんで寝れる気がしないけど。

目黒「奏依ちゃん」

特に意味もなく、真横で眠る想い人の名を呼んでみる。1回、2回、3回とその数を増やしていく。ぐっすり眠ってる彼女に俺の声なんて届いてないと思ったけど、少しして「めぐろ……」と返事が返ってきてびっくりした。

「……目黒、それ、だめ。ラウの」
目黒「どんな夢見てんの」

思わずつっこんでしまうような寝言が聞こえて顔が綻ぶ。それと同時に、ラウールの名前が出てきたことに小さく嫉妬した。夢にすら嫉妬するなんてと思わず失笑する。

目黒「奏依ちゃん。俺の事だけ見ててよ」

つんと彼女の鼻先に触れる。くすくす笑われてるのは夢の中の俺か、それとも現実の俺か。
優しい彼女には俺のこんな我儘、押し付けるわけにはいかないけれど、それでもいつか、この想いを伝えられる日が来たら嬉しいなって。……待ってるだけじゃだめか。
誰よりも君が好き。そんな気持ちを乗せて唇を触れ合わせた。
目が覚めたら一番に奏依ちゃんに伝えたいことがある。その言葉を頭で反芻しているうちに気付けば俺は夢の中へと誘われていった。