好きなやつとかいんの
「翔太くん、今日一緒に寝よ」
そう誘ってきたのは奏依の方だった。珍しいこともあんなって思ったら、何人かは帰ってきてないし、帰ってきてるラウールや阿部なんかは勉強してて邪魔できなかったらしくて、消去法で俺になったらしい。
俺がよく似てると言われるシナモンは、俺じゃなくてふっかが奏依に与えたもの。だけど、俺に似てるってだけでなんだか勝手にシナモンに愛着が沸いていって、それを大事にしてる奏依に微かな愛おしさを覚えていた。
渡辺「お前壁側な。落ちるから」
「落ちないよ?」
渡辺「落ちてたろ。こないだ」
「あれは翔太くんが落としたんでしょ?」
渡辺「ちげーよ」
こいつ寝相悪いくせに自覚ないんだよな。ごろごろ転がって勝手に落ちんの。んで、落ちた音聞いて俺が飛び起きてんのに当の本人は気にせず寝てんの。そんなことある? って感じなんだけど、これまじだから。ありえねえ……。
渡辺「とにかくお前こっち」
「はーい」
壁際に押し込んで、絶対落ちないように俺が壁になる。「狭い」なんて言いながらスマホでゲームする奏依。他の奴らが普段どんなことしてるかなんて知らないけど、俺らはいつもお互い勝手にスマホをいじって飽きたら寝る。だけど今日は違った。なんとなく奏依のことを構いたくなって、その髪に触れた。……うわ、こいつガン無視しやがる。ゲームが一段落ついたっぽいことを確認してスマホを奪う。
「返して」
渡辺「やだ」
「意地悪やめてくださいー」
渡辺「ちげえし」
「違わないから」
スマホを奪い返そうと手を伸ばす奏依。「わ」と声を洩らしてすぐ、俺の上へと倒れ込んできた。そこを捕まえてぎゅっと抱きしめる。
「どうしたの、今日。なんか変」
渡辺「別に」
「具合悪い?」
そう言って奏依は俺の額に手を当てて首を傾げた。いや、俺のことなんだと思ってんだこいつ。
「熱はないみたいだね」
渡辺「当たり前だろ」
「……お酒飲んだ?」
渡辺「飲んでない。いいからもうお前黙っとけ」
勝手に口を塞いだ。俺の唇で。奏依は一瞬驚いた顔したけど、すぐに大人しくなって目を瞑った。
渡辺「……あのさ」
「んー……?」
渡辺「お前、好きなやつとかいんの」
自分の口から不意に漏れた言葉に「は?」とつっこみを入れそうになった。
「いても、翔太くんには関係なくない?」
渡辺「お前まじ可愛くないな」
「……いてほしい? いてほしくない?」
俺を試すような目で見てくる。俺の口は言わなくてもいいようなことも思ったまま口に出してしまうけど、こいつの生意気さも俺のそれと同じくらいにひどいもんだ。じっと俺を見つめて答えを待つ奏依。何も言わずに抱きしめてやれば小さく笑って「分かった」って。何が分かったんだか分かんねえけど。ただ、もう少しこいつの中で俺が気にかかるやつになればいいと思って、唇を奪った。