俺だって男だよ
阿部「奏依、今日、いい?」
「ん、大丈夫だよ」
阿部「ありがと」
皿洗いをしてる奏依をぎゅっと抱きしめる。部屋に連れ込んで何をする訳でもないけど、ただ一緒にいたくて。
部屋で勉強をしていると、こんこんと遠慮がちにドアをノックされる。開ければ、立っていたのは奏依で。「どうぞ?」と招き入れてやる。
「ふふ、阿部ちゃんに誘われるの嬉しい」
いつも持ち歩いてるシナモンをぎゅっと抱きしめながらそんなこと言うから、可愛くてつい抱きしめてしまう。
「勉強してた?」
阿部「ううん、今日はもう終わり。この後は奏依との時間」
ごろんとベッドに寝転がって、ぎゅうっと奏依を抱きしめる。「……阿部ちゃん、シャンプーの匂いがする」なんて奏依が言うから「奏依からもするよ」って返した。奏依の髪から香るシャンプーの匂いは、俺が使ってるのと一緒のはずなんだけど俺のなんかより何倍もいい匂いがして胸がぎゅうってなる。なんでこんなに違うんだろ。奏依の首筋に顔を埋めて深呼吸した。
何も言わずに俺に身を委ねる彼女にそっとキスを落とす。好きだよ、そんな気持ちを唇に乗せて。言わなきゃ伝わんないって分かってるんだけどね。
奏依の髪を撫でて、もう一度キスをすると、ふにゃと奏依が笑った。
阿部「好き」
「私も」
阿部「俺の好きと奏依の好きはたぶん違うよ」
そう言うと、奏依は不思議そうに首を傾げた。分かんないか。
「違ってても、好きな気持ちに変わりはないよ」
阿部「うん、そうなんだけどさ」
でも、そう言われてしまうと、俺に望みないのかなって思っちゃう。それはなんだか切なくて苦しい。
阿部「キスしていい?」
「うん」
触れ合うだけのキスを繰り返す。時々奏依が「どうかした?」なんて聞いてきて、でも何も言いたくなくて、これ以上言わせたくなくて、言葉を塞ぐようにまたキスをした。
とさりとベッドに彼女を押し倒して、その上に覆い被さる。何をするでもないけど、ただ戯れでそんなことをした。たぶん奏依もそれを分かってて何も言わないんだと思う。
「阿部ちゃん」
阿部「何?」
「寝るんなら、こっちで、寝たら?」
阿部「……奏依って本当に鈍感だよね」
「え?」
阿部「俺だって男だよ」
驚く彼女を他所に唇を奪う。薄く開いた唇から舌を滑り込ませれば、彼女の身体はびくりと震えた。怖がらないように髪を撫でながら、何度も「好き」と伝える。
「阿部、ちゃん……」
阿部「ちょっとくらいは意識してね」
そう言って真っ赤に頬を染める奏依の額に口付けた。「ずるいよ……」と奏依が小さく呟いたのは、聞かないふりをして目を瞑った。