もう子供じゃないよ

学校帰り、ふと顔をあげれば、見慣れた後ろ姿が見えた。ぱっと気持ちが明るくなって、彼女の方へと走り出す。

ラウール「奏依ちゃん!」
「わ、ラウール。おかえり」
ラウール「えへへ、ただいま」

よしよしと僕の頭を軽く撫でる彼女はいつも柔らかい笑みを浮かべている。その顔が凄く好き。でも同時に、僕ってもしかして子供扱いされてる? と思ってむっとしてしまう。
家に着いて、手を洗ってうがいをしてから、ただいまとおかえりのキスをする。2人並んで同じことするとなんだか付き合ってるみたいに見えるのは僕だけ?

ラウール「何買ったの?」
「ん? あー、今日出た雑誌。ラウが盛れてるやつ」
ラウール「ふふ、奏依ちゃんも綺麗だよ」
「ありがと。ご飯作る間、それ読んでてもいいよ」
ラウール「わーい! ありがと!」

たしか今回の取材、恋愛系の質問だった気がする。ぱらぱらとページをめくり、Snow Manの記事を見つける。あ、この奏依ちゃん可愛い。この時の撮影、僕、奏依ちゃんと一緒じゃなかったんだよね。記事も、個人の写真だけでグループのはない。たまたまだけどね。
奏依ちゃんのインタビューに集中しよっと。

まず目に入ったのは『好きなタイプは?』ってところ。好きな子の好きなタイプって気になるよね。自分自身は保ったまま、でもその人の好みに合わせたくなる。ちなみに奏依ちゃんの好きなタイプは、優しくて、一緒にいて落ち着く人。……僕、どうだろ。なれてるかな? 一緒にいて落ち着くってどういう人だろ。……僕でいうところのめめみたいなことかな。じゃあ奏依ちゃんでいうと……。

ラウール「岩本くん……?」
「ん? ラウ、なんか言った?」
ラウール「なんでもなーい!」

次に読み進めたのは『恋愛対象になるのは年上? 年下?』って質問。彼女の答えは"年上かな? 小さい頃から年上に囲まれてお仕事させてもらってるからかな、空気感が心地良くて好き。"というもの。うぅ……、僕じゃダメなのかな。
そっと雑誌を閉じて、料理中の奏依ちゃんの元へ向かう。ぎゅっと後ろから抱きついたら「危ないよ」って優しい声が掛けられた。

ラウール「大丈夫」
「でも危ないから、ちょっと離れて」
ラウール「……はぁい」

奏依ちゃんから離れてカウンターの向こうで彼女を見つめる。「ねぇ」と口に出すと「んー?」と適当な返事が返ってきた。

ラウール「奏依ちゃんって年上が好きなの?」
「え? あー、今回の雑誌それか」
ラウール「そう。年上かなーって書いてあった。……年下は?」
「私より年下って、それこそラウとかそれ以上に下の子ばっかりでしょ。子供だもん」
ラウール「……僕のことも子供だと思ってる?」
「え?」

コンロの火が消される。奏依ちゃんが歩み寄ってきて「どうしたの、ラウ」と俺を覗き込んだ。
そして俺は、そんな彼女を腕の中に捕らえた。驚いた顔して、すぐ困ったように笑う奏依ちゃん。

ラウール「……好き。奏依ちゃんのこと、大好き。年下だけど、俺もう子供じゃないよ」

気付いて、と言わんばかりに唇を押し当てた。目をぱちくりさせる奏依ちゃんよりも俺の方が息が続かなくて、一度唇を離して、また慣れないキスをした。