Koji√
夢を見た。俺が関西から出てきて初めてこのシェアハウスに足を踏み入れた日のこと。
あの日は凄く晴れた日だった。迎え入れてくれた奏依ちゃんの笑顔も、お日様みたいであったかかった。
東京に来ただけでもドキドキやし、Snow Manとして活動していくことにも、メンバーにも慣れてない人見知りの俺が、こんなとこでやってけんのかなって、ホームシックになることも多かった。せやけどその度に奏依ちゃんが「康二」って俺の名前呼んでくれて、隣座って話聞いてくれて。
「寂しかったら手繋いで寝てあげるよ」
向井「お、俺、そんな子供ちゃうし」
「あ、振られた」
くすくす笑いながら「夜更かししたら明日に響くよ」ってリビングから去ろうとする彼女を抱き寄せて「やっぱ手繋いでくれん?」なんて甘えたこと言って。
ドギマギしながら布団に入って、一睡も出来ん俺を差し置いてすぐに寝てもうた奏依ちゃん。先寝るんかいって内心つっこみつつ、その寝顔の可愛さに絆されて、そっからもう好きになってた。恋ってほんま急に始まるよな。
夢か現実か分からない目の前の彼女を抱き寄せて「愛してんで〜」って言ってまた微睡みに溶けていく。
頭の中がふわふわしとって、目もようあかん中で、ぎゅうって抱き返してくれる感触が愛おしくて、逃がしたくなくなった。
向井「奏依ちゃん……好き……」
「……ん、ふふ。……あ」
向井「え!? は!? 起きとったん!?」
目を開けてびっくり。俺の腕の中にすっぽり収まってる天使が俺の顔見て笑っとんの。なんやの、起きてたんなら言うてや。恥ずかしいやん。ばっと彼女を引き剥がして、でもやっぱ寂しなってぎゅって抱きしめて、忙しない俺を見てまた奏依ちゃんは笑った。
「さっきね、康二の夢見てた」
向井「俺の? どんな夢?」
「んふふ。康二、関西帰りたいって泣いてて、それ励ます夢」
俺も似たような夢見てた。そう言いかけてやめた。彼女をぎゅっと抱きしめながら「ほんで? どーやって慰めてくれたん?」って、聞いてみた。
「手繋いで寝てあげよーかって」
向井「子供扱いせんといてや」
「あはは、夢の中でもそのまんま同じこと言われた」
そう言ってくたりと笑う彼女が愛おしくて、気持ちが溢れて「好き」って面と向かって言ってもうて。……ただ、いつもと違うのは、彼女があっけらかんと笑うんじゃなくて、照れくさそうに俺を見てたこと。
向井「……そんな可愛い顔されたら、俺、どうしていいか分からん」
「……康二のしたいように、すればいいんじゃない?」
ずるい。あどけない顔で、そんな大人な言葉吐かれたら、そんなん……。受け止められないくらいの好きを言葉にして彼女にぶつければ、彼女からは「私も好きだよ。康二」とシンプルな一言が返された。その一言で天に昇るような多幸感に満ち溢れる俺。
向井「……キスしていい?」
「キスだけでいいの?」
向井「なぁ、奏依ちゃん。男煽りすぎ! 大体、俺、そんなかっこ、してるだけで、もう、やばいの! ほんまやばいの!」
「……そうなるの、願って、これ、着てきたって、言ったらどーする?」
その先に言葉はない。塞いで、奪って、搦めて……、骨の髄まで俺で彼女を、彼女で俺を満たしたくて。
向井「好き……、ん、甘い……。可愛い……っ」
「ふ……っ、くすぐった、こーじ……っ」
シーツに縫いつけた細い手首に想いを馳せて、三日月形に歪められた瞳が映す俺は、笑ってしまうくらい獣という言葉が似合う顔をしていた。