言ったじゃん、男は狼だって
いつも通りの夜。いつも通りとは言えない俺の気持ち。好き。言葉にすると簡単な二文字だけど、収まりきらないくらいの気持ちが俺の中にあって溢れて、どうにもできなくなった。
岩本「奏依、こっち」
「ん」
奏依を引き寄せて抱きしめる。ベッドの上にころがって二人、顔を見合わせて、キスをして。普通のカップルみたいなことしてる、だけど俺たちは付き合ってない。
俺だけのものになってほしい。はじめてそんな風に思ったのはもう5年は前のこと。奏依はあの頃より今の方がずっと強くて綺麗な女性になっているのに、庇護欲を掻き立てられる。掻き立てられるのは庇護欲だけじゃないけれど。
「ふふ、くすぐったいよ」
岩本「ん、こら。逃げないで」
もぞもぞと動く足を俺の足でホールドして、髪を梳いてやる。「甘えたさんだね」なんて笑う奏依に「うるさい」と拗ねたふりをして唇を突き出せば、静かに唇を重ねられた。
岩本「……好き」
「急だね」
岩本「いいじゃん、思ったんだから」
「私も好きだよ、照くんの筋肉」
好奇心旺盛な子供みたいにぺたぺたと俺の筋肉を触る奏依。奏依にとっては何気ないスキンシップかもしんないけど、俺的には意外と意識してたりする。
岩本「奏依さあ、ここで俺に襲われたらどうする?」
「え? どうって……。照くんそんなことしないじゃん」
岩本「例えばの話」
「勝ち目ないからなぁ……。どーしよ」
奏依はくすくす笑いながらぎゅっと俺に抱きついた。……ほんと、危機感ないよね。
「てか急にどうしたの?」
岩本「男は狼ってよく言うじゃん」
「ふふ、また過保護なとこ出てるよ」
"過保護"じゃなくて、注意喚起のつもりだったんだけど。狼はすぐそばにいるかもしれないっていう。
楽しそうに笑う奏依の唇を奪う。言葉と一緒に想いも奪ってしまえたら、奏依の気持ちが全部俺に向いたらって我儘なこと考えながら舌を入れた。
驚いて目を見開く奏依。とんとんと俺の胸を叩くけど、引き離すには力が弱くて男女の差を感じた。
「な、んで」
岩本「言ったじゃん、男は狼だって」
頬を真っ赤に染めた奏依を視界に捕らえて笑う。
男は狼。勿論俺だってその例に漏れないって、これで少しでも意識してくれたらいいんだけど。