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「リンちゃん!ちょっと聞いてよ!!」


ジャッジメントを終えた翌日からまたいつもの日常が戻ってきていた。レッスンもあんず先輩と一緒にしているし、司くんも月永先輩の文句を言いながらも認めてはいるみたいで、最近は月永先輩の話ばかりしている気がします。そしてそんな日常を何週間か過ごした今日、ひなたくんが泣きついてきた。


「よしよし、どうしたんですか?」
「最近ゆうた君がかまってくれないの!ほらあんずさんの企画で同じクラスの子と一緒にレッスンしてて俺を混ぜてくれなくて!」
「さすがあんず先輩ですよね!あんな企画思いつくなんて!」
「俺の話聞いてる!?」


話は聞いてるけど、私に言われてもどうにも出来ないんだけどな。私ゆうた君じゃないから「一緒にレッスンしよう」とも言えないし、言えて「ゆうた君の代わりに一緒にレッスンしよう」だから、ゆうた君がかまってくれないの解決にはならないだろうし。


「わかりました!じゃあ望月がゆうた君の格好をしてひな君と一緒にレッスンをします!」
「別にゆうた君の格好しなくていいよー、俺にかまってくれるなら」


ぐだーっと机にへばりついて意気消沈のひなた君を見ていると、なんだかかわいそうに思えてきた。普段ゆうた君からひなた君の愚痴を聞いていたりするけど、そのほとんどがベタベタしてきてうっとおしいだった気がする。私のお兄ちゃんはベタベタして来ないタイプだから、少し羨ましいなって思ったり思わなかったりしていた。


「ゆうた君はひな君の事、嫌いなのかな?」
「ゆうた君に嫌われたら生きていけないよ…」


そんな大袈裟な、と思ったけど、予想以上の凹みっぷりにあながち大袈裟と言い切れないのかもしれない。ひなた君の弟愛、恐るべし。


「んー、望月はひな君の事好きですよ?」
「ありがとう。でもそういうのあんまり言わない方がいいよ、勘違いしちゃうからね」
「望月ホントにひな君好きですよ?」
「これ、ちゃんと伝わってないのかな?リンちゃん鈍すぎだからなぁ」


机にへばりついていた上半身を起こして、肘をついて顎に手を当ててひなた君は私を見つめる。


「リンちゃんの好きは、ちゃんと言わなきゃいけない人のためにとっておきなよ。俺もゆうた君も言われなくてもわかってるからさ」


ひなた君はそうお兄ちゃんの笑顔で私に言った。



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