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私は夏目くんのあの助言が引っかかったまま、ハロウィン当日になってしまっていた。あれからリンちゃんの事を気にして見ていたが特に変わった様子は見受けられなかった。とは言っても、忙しかったのも事実なのでずっとリンちゃんの事を見ていられたわけでもないのだけど。


「ねえリンちゃん、何か困った事とかあったら私とか、誰でもいいから言ってね」
「?はい、困ったときはあんず先輩にちゃんと相談しますね!」
「うん、一緒に頑張ろうね」


私はこの後入場口で仮装の衣装とかお菓子を販売する事になっていて、リンちゃんに校内の巡回を頼んでいる。校内にはリンちゃんが頼れる人が少なからずいるから、大丈夫だと思う。


「はい!では、望月行ってきます!!」
「気を付けてね。転ばないように」


制服のスカートを翻してまるで踊るような足取りで廊下を駆けていき、途中で振り返って私に笑顔で手を振る姿はプロデューサーというよりアイドルのようだ。手を振り返すとその場でクルッと回ってもう一度手を振ってから階段の方へと走って行った。彼女は本当にアイドルの方が向いているかもしれないな、なんて考えて笑えてきた。


「リンちゃんの事プロデュース出来たら、きっと有名に出来るのにな」









ソラが話す友達の中に彼女は当たり前のようにいた。魔法少女と自称する彼女は、校内に二人の女子生徒という事を除いても有名だった。いや、有名というよりも目立っていたという方が的確か。運動神経もそれを支える身体能力も高いようで、ソラと一緒にパルクールをやっているようだ。とは言っても、実際に会ったことは無くその姿すら見かけた事がない。助けてあげる義理は無いが、ソラが彼女の事を楽しそうに話すからこれは気まぐれだ。


「こんにちワ」
「こ、こんにちわ…」
「そんなに警戒しないでほしいナ」
「あ、あなたは魔法使いさんですか?」


衣装を見てそう思ったのか、それともボクの事を知っていたのか分からないが、魔法使いなのは合っているので頷いておいた。すると彼女は目を輝かせてすごいすごいと飛び跳ねて喜んだ。白雪姫を模した衣装を着て魔女ではないけど、魔法使いを見て喜ぶのは少しどうかと思う。


「もしかして、宙くんのお師匠さんですか?」
「そんな事よリ、キミにアドバイスをあげようと思ってネ」
「アドバイス、ですか…?」


ボクが見た未来はきっとキミにとっては悪い未来となるだろう。でも、キミが差し伸ばされた手の何方を掴むかでその未来はきっと幸せなものとなる。だから、ボクが伝えられるアドバイスは一言だけ。


「キミは幸せな魔法が使えるヨ」
「……幸せな?」
「自信を持っていイ。魔法使いのボクが保証する」



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