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突然だけど私のお兄ちゃんはすごくモテる。中学はお兄ちゃんとは違う学校を選んで私立に通っていたからあんまり気にしていなかったけれど、お兄ちゃんが高校生になってからはファンクラブまで出来て大変だったと聞いた。たまにお兄ちゃんと並んで歩いているだけでファンの女の人に嫉妬のこもった目で睨み付けられるようなレベルでお兄ちゃんはモテる。それこそ夢ノ咲に余裕で入学出来るのではないかと思うくらいにはモテる。だけどお兄ちゃんはアイドルとかモデルとかに全然興味がなくて、お友達と一緒に遊んでいる方が楽しいみたいだった。そしてお兄ちゃんは私に極めて甘い。私が言わんとする事が伝わるだろうか。


「トクサさんの妹ってあなたのことかしら」


綺麗にメイクをして髪の毛もアレンジしてあって、それはもうモデルのような綺麗なお姉さんが私に話しかけてくる時は決まってお兄ちゃんについてだ。高校を卒業してもなおお兄ちゃんはこんなにも人気だ。誇らしいと思う反面面倒だなとも思ってしまう。


「あなたの言ってるトクサさんが望月トクサであるなら、そうです」


今日はハロウィンで一般の人も入場する事が出来るけれど、アイドルを見るついでとは言え私に会いに来る人なんてそれこそお兄ちゃんくらいだと思っていたからとても驚いた。心臓がドクドクと大きく動いているように感じるくらいには平常心を保てていない。


「私は、トクサさんの高校の時の後輩にあたるのだけれど、こんな所で彼の妹さんに会えるなんて思わなかったわ」
「えっと、何かご用ですか?」
「ええ、そうね。ここじゃなんだから他の所に行きましょうか」


彼女の纏うローブがまるで私が憧れた魔女のようで、私はワンピースの裾を握りしめた。あんず先輩に頼まれたのは校内の巡回だけれど、彼女は校舎から出て屋外ステージとは反対に歩いて行く。当然そっちには人影はなく気づけば二人っきりになっていた。ああ、ここまで来たら私だって何をされるか何となく察してしまう。困った時はあんず先輩に相談すると約束したのに。


「さて、ここならゆっくりお話出来ると思わない?」
「…そうですね」


白雪姫は王子様が助けに来てくれたけれど、私には王子様がいない。このまま誰にも気づかれないのはもしくは良いことなのかもしれないが。


「あなたってお兄さんに飽き足らず、アイドルの方々にも取り入ろうとしてるのね」
「別に取り入ろうなんて思ってないです」
「あなたが思ってなくても実際にはそうなんだからあなたの意見はどうでもいいのよ」


そんなの理不尽だと思ったが、それを言える勇気は私には無かった。このまま彼女が言いたい事を言ってそして帰ってくれるのを願うしか出来なかった。これではまるで昔と変わらないと思ったが、俯く顔を上げる事さえ出来なかった。



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