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「流石にまだ許可出せないねえ」
「ですよね…!」
何で聞いてしまったんだろう。聞いてしまった手前頭を抱えるようなことはしないが、正直頭を抱えたい気分ではあった。本当に何で聞いてしまったんだろう。許可が出せないことなんて分かりきっているのに。僕は馬鹿か、馬鹿なのか。尾形さんのことを言えなかった。僕も馬鹿だった。しかしながらひょい、と、尾形さんの主治医である白栖先生の後ろから影が出てくる。
「白栖先生、そこを何とかしてあげられませんか」
「宇根(うね)先生」
宇根先生は白栖先生と同期だと聞く。よく話をしているのも見かけるし、仲が良いのだろう。宇根先生はどうやら僕の馬鹿な考えに賛同してくれるらしい。それは少し嬉しいが、あまりにも馬鹿なことを言った自覚はあるためにいたたまれない。
「何とかって言ってもねえ」
うーん、と唸る白栖先生を前に、あの、と僕は声を出す。
「宇根先生、その、馬鹿なことを聞いたことは分かっているので…」
「うん、そうだねえ」
肯定が返ってくるとそれはそれで頭を殴られたような心地になる。
「でも、伊佐早先生は、」
くりりとした宇根先生の瞳が僕を見遣った。
「出してあげたいんでしょう?」
「ぐっ…」
宇根先生の畳み掛けるような優しさが胸に痛い。違う、そんなことはないのだ。尾形さんは重傷人で絶対安静で、だから銃の訓練なんてもってのほか! 決して、あの可愛らしい行動に絆されたなんてそんなことはないのだ。僕はそこまで安い人間ではないので!
「いや、あの、そんなことは、」
「それに尾形さん、基本は大人しくしているのに、伊佐早先生の気配がすると動き出すんですよねえ」
「………は?」
それは初耳だった。ていうか気配って何だ。僕が行くから尾形さんが無茶をしようとすると言うのであれば、僕はやっぱりお見舞いなんて行かない方が良いんじゃないのだろうか。
そうは思ってもやっぱり蹴り出されるようにしてお見舞いに行かされるので、にっちもさっちもいかないとはこのことなのかもしれない。僕がそんなふうに思考している間にも宇根先生は特有ののんびりとした口調でにっこりと続ける。
「あの、何ていうんでしょうねえ、兵隊さんに言うことじゃあないとは思いますが、いじらしさとでも言いましょうか。見ていると、孫を思い出すんですよね」
「孫…」
そういえば宇根先生にはお孫さんがいると聞いていたが、今はそういう話ではなく。
「いや、でもそもそもまだ固定も外れてないですし」
そう。どれだけ理解を示してもらっても、やはり尾形さんは重傷人であって絶対安静なのだ。それは変わらない。これが変わるのであれば僕は医者じゃあない。白栖先生はうーん、とまだ唸っていた。何か嫌な予感がする。
「まあ、そうですねえ…。尾形さんはああはしてるものの、ちゃんと医者の言いつけは守るんですよねえ」
「ん? ええ、まあ。そうですね」
「伊佐早先生に甘えている部分はありますが、」
「甘…?」
「甘えている部分はありますが、だめと言われたことはやらないという最低限は守っている訳で」
何が言いたいのだろう。理解したくない。絶対に面倒なことだ。
「そうなれば、一つ、方法がありますね?」
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