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 先に言う。僕は納得していない。僕は納得なんかしていない! けれども主治医の白栖先生からの命であり、ついでに逃げられないように虚児院長まで抑えられてしまえば僕は進むしかなかったのだ。僕は一医者である。下っ端である。ああ、悲しきかな、上司の方がやはり強いのだ。亀の甲より年の功、年長者がものを言う社会などくたばってしまえ。とは言ってもやはり僕が下っ端な事実は変えられないのであって、泣く泣く勝ち取ったそれを携えていつものように見舞いにやって来たのだった。
「尾形さん」
病室を覗くと尾形さんが既にこちらを見ていた。僕の気配で動き出す、というのは強ち宇根先生の戯言(たわごと)ではないのかもしれない、なんて思う。あの話を聞いた時は何をまさか、と思ったものの、言われてから見てしまうと心当たりが多すぎる。
 じっと、何も言わない僕を尾形さんは見つめていた。というか見つめることしか出来ないのを知っている。まだ顎の固定は外れていないのだ。それで射撃訓練をしたいだとか本当に頭が可笑しいのではないか。
「訓練許可出ました」
でも僕は言わざるを得ないのだ。言わなかったら言わなかったでもっと面倒なことを押し付けられそうだった。虚児院長は兎も角、白栖先生と宇根先生ならやりかねない。
 尾形さんは、分かりやすく瞳を輝かせた。それを見て僕はこの人でも瞳を輝かせることなんてあるんだ、と失礼なことを思った。失礼なこと、という自覚はある。だから口にはしないが僕が多分呆れていることは伝わっているだろう。隠していないし。そんなことを思っていたら尾形さんは早速、と言ったようにベッドからいそいそと降りようとしたものだから、まだ話は終わっていません! と叫ぶ羽目になった。
「訓練許可は、白栖先生公認のものです」
ならこれ以上何を言う必要がある、と言われた。ような気がした。実際には尾形さんは喋ってなどいないのだから。
「ただし!」
僕はびしぃっ! と人差し指を尾形さんに突き付ける。人を指差してはいけません―――なんてそれこそ耳にたこが出来るほどに言われたことだったが、それがどうした。もう僕はそういった場所にいるのではないのだ、僕は医者で、尾形さんは患者さん。それだけの場所で僕がそんなどうでも良いことを守る理由もない。
「僕の監視の下、のみです」
嫌がるだろう、と思った。だと言うのに尾形さんはなんだそんなことか、と言わんばかりの顔をする。分からない。本当によく分からない。
「…分かっていますね? 破ったらベッドに縛り付けますから。脅しじゃないですよ」
分かっている、と頷かれた。素直だ。素直すぎて逆に怖い。
 けれども了承も得られたと言うことで、尾形さんの機嫌はその日からすこぶる良くなった。その機嫌の良さが僕には、とても怖かった。


















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