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 尾形さんはうきうきと外出の予定を立てていた。本当に、どうして僕が尾形さんの射撃訓練なんかに付き合うことになってしまったのだろう。いるだけで良いから、と言われた言葉はそのとおりになった。尾形さんは決して無茶はしなかったし、しそうになると僕に目で確認することを忘れなかった。本当に出来た患者さんである。こんな強行突破をしてくることを除けば。
 僕はあまり射撃のことはよく分からないので、とりあえず尾形さんの後ろの方で座って眺めているだけだったのだけれど。やっぱり銃の音って大きいんだな、くらいの気持ちで聞いていた。僕には銃の腕の良し悪しなど分からないけれども尾形さんは確か前に結構自信があるようなことを言っていたし、今だって全部的に当たっているように見えるし、恐らく自己申告に嘘はないのだろう。ついでに誇張でもないのだろう。純粋にすごいな、とは思った。僕とはまったく違った分野のことだから、それ以上は言えなかったし、言う必要もないと思った。

 そして、そんな日々が少し続いた日。約束の時間になって病室に顔を出すと、尾形さんの包帯がすっかり外れていた。
「あ、外れたんですね」
だから僕は見たままを言う。縫合痕は結構綺麗に出来ている、というのは経過観察で知っていたが、改めてこうして包帯を取ってみると自画自賛したくなる。本当に綺麗に出来た。うん、よし。とても良い。
「しかし早いですね…普通もうちょっと癒合するのにかかるはずなんですけど…」
しげしげ、と眺めていたら、尾形さんが少しだけ身動ぎをする。
「…センセー」
一言呟いてから、尾形さんは喉を整えるように咳をした。喋らないと声の出し方を忘れると言うが、尾形さんもそうなのだろうか。いや、喉は動かしていた…鳴らしていた? のだからそうでもないような気がするが。
「近い」
 その言葉に僕は初めて、尾形さんと僕の距離を認識した。鼻と鼻が触れ合いそうなほどだ。ああ、と思う。これは、少し、まずかった。僕でも思う。失敗した。
「………すみません」
だから僕はすぐに謝って引いて、それから医者としての業務に戻ることにした。本当に癒合しているのか確かめていく。こつこつと叩かれるのは面白くはないだろうが、治療なので仕方がない。
「ひくほど治癒力高いですね…」
素直な感想を言うと、尾形さんはこんなのは普通だ、と言った。全然普通じゃないから言ったのだが、残念なことにそこまでは流石に尾形さんには伝わらないらしかった。


















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