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 そうしてきっかり二時間後目覚めた僕たちはそっと宿をあとにした。お金は前払いしてあるので考えなくて良い。そもそも尾形さんのお金であることだし、まあ僕だってこんな急でなければ一応の貯蓄だってあったのに。まったく、尾形さんは準備もさせてくれなかった。でもまあ、僕がお金を残したところで八雲が使うだけだろうし、その辺りは皆巻先生とかが上手くやるだろう。別に盗まれて困るお金という訳でもない。いや困るけど、何かしようとしていた訳でもないのだ。ただ使うことがないから貯まっていただけで。
 尾形さんは僕を一応気にかけてはいるらしかった。山へと向かっているのだろうな、という道で、尾形さんはふいにセンセー、と呼んだ。
「銃を扱ったことは」
「あの、尾形さん忘れてるかもしれませんが僕、医者なんですよ」
何を言い出すのかと思えば。
「…だよな」
「一体何なんですか。というか今から山に入るんですか。この時期は熊が冬眠から出てくる時期だと思うんですけど」
「そうだな」
知っている、と尾形さんが言って、少しだけ振り返ってみろ、と指示された。
 言われた通りに振り返る。別に、普通の町だ。僕の住んでいるところよりかは賑わっている。僕が何も分かっていないことが分かったのだろう。尾形さんは後ろから僕の耳元で小さく、呟いた。
「あの角のところ」
指もさされていないのに、どの角か分かってしまった。
「…ッ」
「分かったか。ならもうあまり見るな」
こっちを向け、と言われてまるで僕は操り人形のように動く。
 角のところにいたのは兵隊さんだった。この状況で、兵隊さんがこんなところにいる訳がない。そんな話は聞いていなかった。だから、多分、そういうことだ。
「探しに来たんだろうな」
僕の理解が追い付いたのを察したのだろう、尾形さんが笑う。
「ちょっとセンセー、囮やって来てくれ」
「えっ」
「大丈夫だ、ちょっと他愛のない話をしてくれるだけで良い」
ほら、と背中を押される。
「他愛ない話って言っても、そもそも知ってる人かどうか」
「病院にも来てたから、向こうはアンタの顔を覚えてる。一人出歩いてれば向こうから話し掛けてくるさ」
「こんななんにもないところを、どういう理由でほっつき歩いてるって言うんですか」
「それは任せる」
大雑把すぎる。
「合図をしたらすぐに戻って来い」
「合図って」
「絶対に合図って分かるモンだから安心して喋って来い」
 大丈夫だ、と尾形さんは言った。ちゃんと考えはある、と。
 そんなことを言われてしまえば僕は大人しくそれに頷くしかなかった。


















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