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 流石に呆然としたままの僕をそっとしておいて、尾形さんは鹿を獲って来てくれた。山に入って野営の準備をすると、肉を捌いて食事にする。
「狩猟の経験は?」
「銃持ったこともないんですよ、ある訳ないじゃないですか。…まあ、昔、着いていったことはありますけど。こういうの続くなら、解体くらいは出来ます」
「そういえばセンセー、料理は」
「何でも火を通せば大体食べられますしそこそこ美味しいでしょう」
尾形さんは何も返さなかった。まあ僕に料理の腕を期待していた訳ではあるまい。そう言えばこうして食事を一緒に取るのは初めてだったな、と思う。
 食事なんて、時間が勝負だった。だからこんなにゆっくり食事を取ったのが久しぶりと言えば久しぶりだったのだ。多分、軍医とかになればもう少し優雅な生活が出来たかもしれない。まあ皆巻先生辺りに止められただろうけれど。それこそ全力で。
「まあ、鹿より人間の方が断然数捌いてるんですけど」
僕が軽口のつもりで言った言葉は全然ウケなかった。悲しい。尾形さんは何も答えず静かに食事を進める。これから作業をするのだと言っていた。残った肉を埋めるらしい。
「…鹿」
肉の方に目をやると鹿と目があった。もう死んでいるものと目が合う、というのも変な話だ。とても大きな目だった。これが生きていたんだなあ、と思うとなんだか不思議な気分だった。それと同時に、尊敬のような気持ちだって浮かんでくる訳で。
「大きいですね。………尾形さんはすごいですね」
「…何がだ」
「鹿、獲ってきてくれましたし。料理もしてくれましたし。美味しいし」
僕の言葉に尾形さんは少しだけ黙り込んだ。その理由は何となく分かるので何も言わない。
「…美味いのか」
「はい」
 生憎、此処には鏡はないのだから。
「うん、美味しい」
僕の表情は恐らく回復していないのだろう。尾形さんは暫く疑うような顔で僕を見ていたけれども、美味いのなら良かった、とだけ呟いて自分の食事に戻っていった。


















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