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 尾形さんの処置を終わらせて、僕たちはまた移動を開始した。どうやら土方さんたちの隠れ家へと向かうらしい。老人二人に兵隊さんに見るからに医者、だとあまりに目立つとも思ったので、僕はずっと着たままだった白衣を手荷物に仕舞うことにした。
「なんだかセンセーじゃないみたいだ」
そう尾形さんに言われて確かに尾形さんの前で白衣を脱いで行動するのは珍しいな、と思う。大風の日、僕の部屋に泊まっていった時くらいではないのだろうか。
「慣れませんか?」
「まあな」
「でも、僕は僕ですよ」
「それは、知ってる」
知ってる、と尾形さんが繰り返すのが少し気になったけれども、僕はそれ以上追求することはしなかった。
 土方さんたちの隠れ家は結構遠く、途中で何泊かした。このお金は何処から出ているのだろうと不思議に思う部分はあれど、聞かない方が良いのだろう。そもそもまだ仲間として認められているかも分からないのだし。
 そんなことを思っていたある日、尾形さんが少し席を外したところで土方さんが僕を見て笑った。
「お前さん、あの男を好いているのか」
笑ったけれども、その言葉は軽快なものだった。僕にその本心は探れないので、出来るだけ嘘のないように答える。
「あー…趣味が悪いという類の誹りであれば受け付けませんけど」
「いや、他人の嗜好にどうこう言う趣味はないさ」
しかし認めるんだな、と言われて隠すことでもないでしょう、と言う。
「何か問題がありますか」
「いや」
「では興味本位ですか」
「ああ」
打てば響くとはこういうことを言うのだろう。僕はそんなことを思う。尾形さんは尾形さんで何か言えば返してくれるけれども、それが会話になっているかと問われると怪しいところがあるのだから。
「大変そうだと思ってな」
「それは…まあ、覚悟はしているので…」
改めて他人に指摘されると何だかどうにもままならない気持ちになるのだな、と僕は思った。そういえば今までこういうふうに指摘されたことはなかった。分かっていた人もいると思うのだけれど。いや、あれだけ何も分かってない岩師先生の前では何も言えないか、と思い直した。そういえば岩師先生はまだ女学校へ通っている年下の許嫁との文通にたいへん頭を悩ませていたけれど、上手くいっているのだろうか。
 僕が現実逃避をしている間に尾形さんは戻ってきた。
「何の話をしていたんだ」
尾形さんはいつもの目で僕を見遣ったけれども、土方さんが僕が何を言うよりも先に秘密だ、と言ったのでそれに倣うことにした。僕にだって本人の前で恋の話をする胆力はなかった。
 自然仲間はずれにされた形の尾形さんは暫く拗ねていたようにも見えたけれども、それを僕はどうすることもしなかった。


















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