愛していると云えば君は何処にも行かないと



 順玲、と呼ぶ自分の声がどれだけ甘ったるいものになっているか分からなかった。弟だ、間違いなく弟だった。例えその血が半分も繋がっていなくとも、彼は自分よりずっと高貴な血を引くこどもだった。幼い朝顔にはそれがひどく尊く思えて、だからこそ誰にも渡したくないなんて思ったのかとしれない。
「…久我原の」
「朝顔って呼んでよ」
「………だめだと言われているから」
誰に、なんて聞かなくても分かる。
 大人たちはみんな嘘吐きで、それでも父上だけはその中で必死に真っ当に生きているように見えて。
「じゃあ、大人になったら呼んで」
「大人に?」
「うん。そうしたら順玲だって怒られないだろう?」
「…そうかな」
「そうだよ」
 だから、はやく、大人になろう?
 そう言ってとった手を、いつかは離してやれるのか。その頃の朝顔には分からないことだった。



(信じていたかった)



知られたらきっと台無しで終わりでごめんねあのねわたしあなたが / 卵塔


















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