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君の心臓がいつか降りてきて
僕がそれを食べる日が来るなんて
ほら
考えつかないだろう
「ギンちゃん」
いつもこの呼び方は慣れないな、と思う。
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そもそも三花がそう呼びたいと言った訳ではない。元々流魂街にいた頃だって家族みたいな人たちのことはさん付けで読んでいたし、ちゃん付けなんてそれこそ年下の、何も分からなそうな子供、くらいで。まさかそれを大人の男にするようになるなんて、ある意味悪い夢のようだった。
それでも、恐らく先手を許した三花が悪いのだ。
例えそれが勝てない争いだったのだとしても。
最初呼び方に困ってあの、だとか貴方、だとかいろいろ試行錯誤して呼んでいたら、ボクの名前市丸ギン言うんやけど、と言われたのだ。
「君は三花やろ? 糸吉三花」
「そうです」
「三花」
「はい」
「ボクは市丸ギン」
「………市丸さん」
ひねり出されたのは苗字で、ああこの人の名前を呼びたくないんだな、と思ったことを覚えている。呼び方に困っているなんていうのは、多分自分への言い訳だったのだ。当時の三花は分からなかったが、時間が経って落ち着いてからなら分かる。糸吉三花は、市丸ギンの存在を認めたくなかった。だから個を表す名前というものを呼びたくなかったのだ。だって呼んでしまえば存在を認めることになるし、目の前に訳の分からないものが自分と同じ存在として居るのだと、突き付けられるようで。この男と三花とは違う生き物なのだと思っていたかったのだろう。
すべて、後の祭りなのだけれど。
「他人行儀やなあ」
うーん、という唸り声。
「ボクら同じ家に住んでるのに」
彼は家族だとは言わなかった。三花もそれを訂正することはしなかった。
「三花」
強要するように彼は呼んだ。それはきっと彼の中で最初から決まっていたことだったのだろう。
「………ギンさん」
それでも三花は足掻いた。足掻くことが本当に正しいのか分からないまま、足掻いた。というよりも、この時はこれで充分だと思っていた。
でも、それでも彼は唸ったのだ。
「もう一声欲しいなあ」
「………流石に、呼び捨ては」
「それもそうなんよね」
じゃあどうしろと、と思った三花に彼は良いことを思いついた、とばかりにぽん、と手を叩いた。
「ギンちゃんにしよ」
その日から、三花は彼のことをギンちゃんと呼ぶし、彼はそう呼ばれて返事をするのだ。
「何か用?」
「手紙、届いてたから」
「そうかあ」
ありがとな、と手が三花を撫でていく。それはとても優しいのに、どうしてかいつも殺されそうだ、と思ってしまうのだった。
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