2
嘘が意味を為すのは
そこに信じる行為があるからだ
何もないこの世界に
墓標も何も立たないように
嘘が嘘に為るのには
まだ すこし
遠い
市丸ギンはスパルタだった。
こんな子供を捕まえて何を、と思うほどにスパルタだった。
「ッ、う、ぁアッ」
痛みに声が漏れる。
何をしているのかもよく分かっていなかった。分かっていたのは、多分、やらなきゃ死ぬということだけ。それが顔に出ていたのか、そんなことせえへんよ、と彼は言った。
「君を殺したりはせえへん」
「―――……」
本当か、なんて聞けない。
三花には、彼がなあんて、嘘≠ニ笑うのが簡単に思い描けた。信用出来るほど、期待出来るほど彼に心を預けられていなかった。預けることを許されなかった、とも言う。ならば、と立ち上がる。泣いている暇はなかった。彼が信用出来ないのであれば、殺されないうちに強くなるしかない。彼に殺されない程度に、殺されそうになった逃げることが出来る程度に、強くなるしか。
そう決めてもすぐに強くなるなんてことはなく、次の一撃で三花は沈んだ。
2
目を覚ますと意識を失った場所から動いていなかった。普通自分の所為で子供が気を失ったら布団とかそういう転がってても良いところに移動するものじゃないんだろうか。此処が何処だか知らないけれど(来る時は抱えられて一瞬だったので)、岩だらけの謎地帯だ。地面は当たり前のようにごつごつしている。
起き上がると、衝撃かお腹がぐう、と鳴った。こんな時なのに、と三花は苦々しい顔をする。お腹が減るなんて、可笑しいことなのに。まるで三花は生きているみたいに食べ物を欲する。周りの人たちはお腹なんて空かないと言っていた。それでも三花のために食べ物をくれた。
三花は、死んでいるのに。
いつの間にか市丸ギンは近くに立っていた。驚いて飛び退くとまたお腹が鳴る。叩いて誤魔化そうとしたのを市丸ギンが止めた。何で。
「お腹減るんやろ」
彼は言う。
「君の周りの大人は教えてへんかったかもしれんけど、それは霊力ってのがある証拠」
「れい、りょく?」
「そ、死神になれる力」
「しに、がみ…」
目の前の男のよう、に?
「強くなりたいやろ?」
市丸ギンは三花を覗き込む。
「死にたくないんやろ?」
―――殺されたくないんやろ?
反射的に頷く。
「なら頑張り」
大きな手が三花の頭をはたくようにして撫でていった。そして逆の手で、いびつなおにぎりを押し付けられた。
おにぎりは、しょっぱかったけれども美味しかった。
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