選ばれなくてもここにいられるのだから



 物語を書くことは嫌いじゃあなかった。ある意味真面じゃない人間から見たらきっと、この行動は日記を全世界に公開しているのとなんら変わりはないのだろうけれど、そもそもセナにそういった思いはないのだから気にならない。他人が何と言おうともセナの感情はセナのもので、だから日本から届くネットニュースを指でなぞるような真似はしない。
「私は主人公じゃないの」
 日本では珍しい猟奇殺人。
 それが結局、表面化していないだけなのかそれとも国というものの特性であるのか、所謂土壌の問題であるのか、そこまではセナには分からない。ただ、犯人はセナの主人公になろうとして、そして失敗した。セナの主人公は、そもそも失敗をしない設定なのだから仕方がない。
―――人間である以上、
 失敗とは、無縁になれないものなのに。
「そんなことはとっくの昔に分かっているのよ」
物語のようになんてなれないことは、分かっていた。
 そうでなければいけなかった。



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