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 夕張は普通の街に見えた。炭鉱の街ということで大きく、人も多いがそれだけで他に変わったところは見られない。長閑、とも言えるだろう。こんなところで刺青人皮なんておかしなものが出ればすぐに噂になると思うのだが。土方さんのもとに入ってきたのが風の噂程度だったことを考えると、もうその刺青の持ち主は生きていないのだろうなあ、と思う。ついでに言うと、刺青人皮の形になっているとも考えづらい。前者であれば変な刺青を入れた男としてもっとボケていない情報が入ってきそうなものだし、後者であればその形にした者がいるはずで、その人間の言った付加価値などがついて回っても可笑しくないのに。今回の情報にはそれがなかった。
 とは言え、これは僕のただの推測なので尾形さんにこっそりこぼしたくらいのものだった。別に、これが当たっている可能性はそこまで高くないと思うし、ついでに言えば尾形さんにとっては刺青の囚人だろうと刺青人皮を持っている人間だろうと、殺すことはそう難しいことじゃあないんだろうな、と思ったのもあった。
 今回僕がついてくることになった理由は、多分、そう、ない。怪我をした時に治療の出来る人間がいれば楽は楽だけれど、この二人であればそう心配するようなことはないだろう。僕はただの尾形さんのおまけだし、まあ足を引っ張らなければ良いかな、と思っている。土方さんだって何か僕に期待している訳じゃあないだろうし、僕には土方さんのために頑張る理由もない。聞かされたあれこれの目的はまあ悪くはないと思うが、そもそも僕は金塊と言われてもあまり興味を抱けなかったのだ。
 それは、尾形さんも同じだろうのに。
 そんなことを考えていたら、尾形さんにオイ、と呼ばれた。
「何ですか」
「牛山見てろ」
「えっ」
「いいから」
牛山さんの入っていった道に押し込むようにされる。ちなみに牛山さんは少し先で女性の方々に話し掛けていた。背は大きく顔も少々怖いものの、何だかんだで牛山さんは朗らかなところがあるので、こうして話が始まってしまえば結構長引く。
「絶対に牛山とはぐれるなよ」
絶対だぞ、と念を押してから、尾形さんは走っていった。一体何処に行くのだろう。
「………僕は、尾形さんの中で一体どれほど子供なんですかね? 僕の方が年上なんですけど」

 少しそのまま待っていると牛山さんが戻ってきた。それらしい情報は得られなかったらしい。
「尾形は?」
「なんか、走っていきました」
「一応聞くが、止めたか?」
「………あっ」
忘れていた。完璧に忘れていた。好き勝手やってるな、くらいしか思わなかった。
 尾形さんはこんなところで一人走り出した理由なんて、何か見つけたから、しかないだろうに。
「…すみません………」
「いや、尾形が聞く訳もないか。伊佐早先生は悪くないさ」
気にするな、と牛山さんは言う。
「それに伊佐早先生を残していったのは戻ってくるってことだろうしな」
「…そういうものですか?」
「そういうものさ」
さて、と牛山さんが僕の背中を叩く。
「探すか」
力加減はちゃんとされているようで、そんなに痛くはない。
「あ、えっと、本当すみません…。あっちに向かって行きました」
「あっち…。伊佐早先生、ちょっと人にあっちには何があるか聞いて見てもらえんかね」
「良いですけど」
「俺だと怖がられることもあるからな」
「ああ…」
先程の女性らはもういなくなっていた。牛山さんを怖がらない人を見つけるより、僕が聞きに行った方が早いだろう。
「すみませーん」
 早速、一人、よく動いていそうな男を捕まえる。
「ちょっと人を探してるんですけど、あっちって何か、特別な建物とかあるんですか?」
「特別な建物? あーそういうのはないけど、お連れさん、あっちに行ったのかい? 何か金持ちの人?」
「金持ち?」
「あっちには剥製屋があるんだよ。素人目に見ても良い品でなあ、結構儲かってるとも聞くし、前に一回泥棒に入られたこともあるって」
「剥製屋さんですか。うーんお金持ちではないんですけどねえ、ありがとうございます」
「いいってことよ」
 笑顔で男を見送ってから牛山さんのところへと戻る。しかし、剥製屋と来た。
「剥製屋さんがあるそうです」
「きな臭いな」
「僕もそう思います」
動物の身体の一部があって可笑しくない場所。木を隠すには森の中、では、刺青人皮を隠すには?
 人間も、大別すれば動物だ。
 同じことを思ったのだろう、牛山さんが急ぐか、と言った。


















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