足りないなら全部あげる(Strawberry Cheesecake)
ざくざく、ざくざく、その音は別に本当にしている訳じゃあない。それでもあたしの身体の中の、きっと何かよくないもの、減ったらいけないものが削れている音だった。でもあたしはそれが嫌という訳ではないし、目の前の男にはひどくそれらが欠如しているように見えたし、だからやってみせているだけのこと。これは狂った愛、狂った愛しか目にしてこれなかった男の可哀想な末路。
「どうして」
本当に意味が分からないという様子で、人間になりそこねた男―――尾形はあたしのことを見る。まんまるな瞳で、まるで猫みたいに、あたしを見る。あたしは多分、ねずみになりたかった、それで良かった、搾取されるだけの何か。食べられて血肉になって、それで終わり、幸せな物語。でも世界はそれを許さない。
だから、削る。彼がきっと、あたしを何かにしてくれるように。
笑って、笑って。彼の望む正反対の行動をしてあげる。
「だから私のこと、愛してね」
あたしの言葉に、彼は可愛らしく小首を傾げてみせた。
*
(愛せないなんて言わせない)
*
エフェメラ @ephemera_odai
prev /
next
ブラウザバックor戻る
ALICE+