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 音を音として認識するよりも、身体で揺れとして感知する方が早かったように感じる。結局のところそれは僕の体感で、科学に基づいたなんやかんやではないのだけれど。考えるよりも先に走り出そうとした僕の腕を、牛山さんが掴んで止めた。
「先生」
「あ………」
それで僕は一体自分が何をしようとしていたのか悟る。
「…すみません。冷静ではありませんでした」
「別にそれくらい良いがね」
「どうしましょうか」
「とりあえず塞がれる前に少し様子を見てくる。こういう場合はどうしたら良いのかとかあるか」
「見てくるって…」
「俺はまあ、こう、頑丈だしな」
 勿論、医者としてはこんなところに入っていくなんて止めるべき行動なのだろう。
「じゃあ、僕も、」
「先生は此処で待ってろ」
だめだ、と牛山さんは言う。というか、背広のまま行くんだろうか。
「アンタが倒れちまったら誰が尾形を診るんだ」
「―――、」
 その言葉に、僕は息の仕方を失ったような気がした。勿論それは気の所為で、だから僕はすぐに次の言葉を、正しい言葉を言うことが出来たのだけれど。
「僕、は、」
笑えていたのだと思う。
「尾形さんのためだけの医者じゃあ、ないんですよ」
 そもそも、牛山さんとそういう話をしたことはなかった。だから、本当のところ何処まで知られているのか分からないけれど、まあ牛山さんだし、別に気にしなくて良いのかもしれない。正直なところ、今まで気にしたこともないのだけれど。
「ガスを吸い込まないようにしてください。基本的には酸素は下に溜まるはずですが、足元で呼吸をしたからと言って絶対ではありません」
牛山さんは分かった、充分注意する、と笑った。
「ちゃんと連れ帰ってくるさ」
それから、ぽん、と頭を撫でられる。そんな歳じゃあないのにな、と僕は思いながらも、もう何も言うことはしなかった。


















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