風の音がしていた




 この人生があの時を転換点として、まったく違う方向へと走り出したことを僕は分かっていた。ひだまりの記憶に現を抜かしていた頃とは違う、僕はもう二度としないだろうと思っていた恋をして、そうして自分で決めて歩き出したのだ。誰も、やれと言わなかったことを、僕は、僕自身の選択として受け入れた。それはもしかしたら裏切りなのかもしれなかったし、単に僕が誰かにそう言って欲しいだけなのかもしれなかった。
―――でも。
一つだけ、確かなことがある。
 この先どんなことが待っていようと、たとえ今まで逃げたかったものに捕まっても。どうしても、僕は。
 前に進まなくてはならない。
 それが自分で選び取ったことの代償だった。僕が僕であるために、それだけは譲れなかった。


















prev / next

ブラウザバックor戻る
ALICE+