あなただけが私の存在理由
こんな籠のような場所に、美しい彼を捕らえておくことがどれほど罪深いことなのか。誰も気付かないこの状況が朝顔には信じられなかった。正妻が亡くなり、そしてまた、父も亡くなり。拠り所を失った母は必死なようにも見えた。もしもこれが自分たちのため、とでも言えるようなものだったら、朝顔はもう少し違った道を選んだのかもしれない。そうなったとしても、どうせ、彼女の理論など聞かなかっただろうが。
だって、彼女は理解していないのだ、彼女は矮小すぎて彼の美しさを理解出来ない。だから、朝顔は彼女に問わないのだ。あれさえいなければ、と言う女の醜さを知っていたから。
小さな身体は震えもしないで、あたたかく朝顔を包み込んでくれるのに。彼女はその偉大さを知ることはないのだ。理解することはないのだ。それだけが、唯一、哀れに思われる。こんな、何一つ理解の出来ない人間たちに囲まれて。あの美しさが消え果ててしまうのではないかと、ただただ気が気ではなかった。逃げて欲しい、逃してあげたい、こんな狭苦しい檻の中にいるのではなく、ちゃんとなにもかも。
だから。
「母さん」
朝顔は笑うのだ。その女から受け継いだ笑みでもって、毒を制す。
「私のことは気にしないでください」
彼女の手を取って、彼女と同じ仕草をしてみせる。彼女は彼の母のことを売女と罵っていたけれど、彼女だってそう変わりはないように朝顔の目には映っていた。
「あの憎き男を追放するためなら、私は私がいなくなっても構わないのです」
母は暫く呆然としてから、ひとしずく、涙を流して朝顔に謝った。
そんなものは要らないから、さっさと解放して欲しかった。
*
(君のためなら世界だって欺けるよ)
*
@bot_0dai
prev /
next
ブラウザバックor戻る
ALICE+