冬の面会室
*直接的な性ワード有
成宮鳴は高校生である。
だから実家に帰るついでというかこちらが本命というか遊びに行った想い人の家で無防備にも自室に通され剰えベッドの上に座るなどされたら普段いろいろ抑えているというか違うベクトルで発散されているはずのものがドーンと爆発しても可笑しくない訳であって。今までだって部屋に通されることはあったけれども、流石にベッドに座るようなことはなくて、だから単純に意識されていないのだろう、と思っていたのだけれどこれで一気に分からなくなった。しかしながら成宮とて好きな人に嫌われたい訳ではないし、よくフィクションで見る『誘ってる自覚がないのか?』みたいなものが如何に自分勝手な行動であるか耳にタコが出来るくらいに姉から言われているのだ。出来るくらい、というか多分出来ている。成宮の耳からは足が八本生えているに違いない。
いや、そうじゃなくて。
「あのさあ、」
「うん?」
うん? ではないのだけれど。ベッドの上に座って隣座れば良いのに、と言う田面に何を言ったら良いのか分からない。いや確かに今更隣に座るようなことは珍しくもなんともないのだけれど、それは今までソファだったり外であるならベンチだったり畳の上でも座布団を並べたとかそういうもので、ベッドではなかった。勿論、ベッドは寝るための場所でそういうことをする場所、というのがメインではないのだと分かってはいるが、いやこれ無理だ。
「彩月ちゃん知らないの?」
腹を括って見上げる。
「オレ、男なんだよ?」
いつもの顔。
そういえば今までそういう話ってしたことなかったんだよな、と思う。でも、そもそも付き合っている訳ではないのだから、それは当然と言えば当然なのだけれど。この関係って何なんだろうな、と成宮は思う。思うけれど、聞かない。
「………つまり、」
田面はしげしげと成宮を眺めたあと、しみじみと言った。
「性欲旺盛な男子高校生は今すぐヤりたいと」
「待って」
「穴さえあれば何でも良いと」
「良くないよ!?」
「えっ」
なんで今驚かれたんだろう―――そう思っても言葉にならない成宮に田面は追撃の手を緩めない。いや、これそもそも攻撃、とかなんだろうか。分からない。田面の表情はいつもの通りである。
「余りある性欲の捌け口になっても仕方ないよね、って意味では」
「そこまで言ってないしそうじゃないよ!? ひどい! 彩月ちゃんひどい!! コーコーセーになんてこと言うの! 夢が壊れる!!」
「逆に私は鳴くんがそんな夢持ってたことに驚きかな…」
ぱちり、ぱちり、と瞬きの音が聞こえたような気がした。
「鳴くんとっくに脱童貞しているものだと」
「なんで!? そんな暇なかったの彩月ちゃんが一番良く知ってるでしょ!?」
「えっ。あ、うーん…言われると確かに」
「言われないと思い至らないレベル!?」
野球と休息を繰り返している青春のことを誰より近くで見てきたのが田面だと思っていたのに、何か毒気のようなものを抜かれてしまったような心地だ。
来ないの、と言われて行かないよ、と返す。
「男なんじゃなかったの」
あからさまな挑発だった。出来るものなら乗ってしまいたかったけれど、それはだめだ。いろいろな方面でだめだ。
「子供(ガキ)で良いです!!」
だから、どうにかこうにか下を向く。気持ちが静まってくれることを願って。別にこんな他愛のないことであれこれあったりはしないけれど、流石にまったくもって興奮していない、と言ったら嘘になるから。
「彩月ちゃんはオレのこと童貞って今知った訳だけどさ、」
「あ、ごめん、普通に知ってた。さっきのは一応のカマかけ」
「なんで!? 普通に聞いてくれれば答えるのに!?」
「鳴くん不意打ちに弱いよなーって思い出して」
に、とやっと、その唇に笑みが浮かぶ。
「不意打ち食らってる鳴くん可愛いし」
それに、狡いよ、と言い返すことすら出来ないのだけれど。
成宮鳴は盛大に恋をしているが―――恐らくそれは片思いではない。
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