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月形までは山中を移動する、となってもまあ、そうなるだろうな、としか言えなかった。鶴見さんから追われている状態であるのだし。鶴見さんの力がどの程度かは分からないが、僕らのことを重大事件の関係者、などと言ってしまえば他の隊を巻き込むことだって出来るだろう。分かってはいたがこれで晴れてお尋ね者である。八雲が知ったら盛大なため息を吐くだろう。一応これでも品行方正に暮らしてきた方だと思うのに、何がどうなったらお尋ね者になんてなるのか。
「どうした」
「いえ、これから大変だなと思っただけです」
これまでも大変だったには大変だったのだけれど。こうして改めて突き付けられるとなんとも言えない気分になるのだと思った。茨戸でも何かあったようだけれど、尾形さんは僕を隣町に残していったし、結局のところ何があったのかは詳しく聞いていない。怪我の理由だとかそういうのは聞いたけれど、狙撃されたというだけで僕には充分だったし、それ以上聞くべきだったのか。そうすれば、もう少しくらいは心構えみたいなものが出来ていたのだろうか。分からない。分からないけれど、過去のことだからと言って無視する訳にもいかなくなった。これが分からないとこの先どうしたら良いかも分からないのだから。
「センセー」
「はい」
「そう、難しく考えなくて良い」
「そういう訳にも…」
「俺がいる」
は? というのは流石に飲み込んだ。
「俺がいる限り、考えなくても良いだろ」
「………だから、」
そういう訳にもいかないでしょう、と言うのが精一杯だった。
さて、何の蓄えもなく夕張を飛び出してきたので、当然食べ物は自給自足である。幸いなことにそれなりに食べられるものに対して知識のある一行らしいので、困ることはないようだったが。お腹が空いたままなのはよくない、体力は勿論、思考力さえ奪われてしまう。栄養があるものを獲れるのであればそれに越したことはない。
アシリパさんの罠作りを、僕は手伝わなかった。別に手伝いたくなかった訳ではないが、手は足りていると思ったから。
「センセーは薬草なら分かるぞ」
「え? あっ、はい。分かります。食べられるものもそれなりに」
「なら伊佐早はそっちを探して来てくれ!」
「はい」
分かりました、と言うより先に尾形さんが僕の襟首を掴んだ。そうしてそのまま引っ張っていく。
そんなことをしなくても逃げないのにな、という思考はこれまでも随分したと思うし、きっとこれからもたくさんするのだろう、と思ったらため息くらい吐いたって良い気がしていた。
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