満たされることを愛と勘違いして



 この身体が思うように動いてくれないことを、久我原はよく、知っている。だから別にこの思いを伝えるようなことはなかったのだけれど。
「お前は、」
くろぐろとした目が久我原を見ていた。どうしようもない、瞳。自分と同じだと思った訳ではない。ただ、それでも。久我原はこの瞳が好きだった。どうしようもない、何処にも行けない。それが分かっていたから、きっと、好きだった。
「俺のことが好きなんだと思っていた」
「ええ」
 望まれた通りに演じることはそう、難しいことではない。今までずっとやってきたこと。この身体に基づいた演技を、久我原八雲≠ニしてやってみせる、だけ。
―――でも、
それは単に久我原だけがそうという訳ではないのだ。誰もが皆、多かれ少なかれそうして生きている、久我原におけるその範囲は他人のそれより広かっただけ。
「好きよ」
「なら、」
「でも、考えることをやめたくないの」
だから、貴方が私のことを抱きたいと思ってくれても断るわ。
 心しかあげない、なんてことを言うつもりはないけれど、この唇に浮かぶのが嘲笑であるならば。
 久我原に、そうされてやる資格などないのだ。

 かわいそうね。



@hannshudou


















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